パリ五輪のゴルフ競技で日本の松山英樹選手が銅メダルを獲得し、日頃ゴルフファンではない人たちも熱心に観戦していたようだ。賞金の出ない五輪で、世界のトッププレーヤーが懸命にメダルを狙う姿は、改めてゴルフの魅力を感じさせた。
そうしたプレーヤーたちの技術を支えるのがゴルフクラブだ。楽器・音響機器メーカーとして世界的に知られるヤマハ(浜松市)は、多彩な事業を展開する中、ゴルフクラブ造りも手がけている。8月22日、同社はゴルフクラブの新製品を横浜市の新拠点で披露し、2025年に向けて新たな事業戦略を打ち出した。
▽5代目INPRES
この日発表したのは、ヤマハゴルフクラブ「INPRES DRIVESTAR(インプレス・ドライブスター)」の新製品。ヤマハは1982年、テニスラケットで使用しているカーボンをゴルフクラブのヘッドに採用し、ゴルフ事業に乗り出した。現在はアスリートゴルファー向けの「RMX(リミックス)」シリーズと一般ゴルファー向けの「INPRES」シリーズというブランドを展開。今回の新モデルは、飛距離が出るクラブとして幅広いゴルファーに人気があるINPRESの5代目に当たる。
▽8軸積層
最大の特徴は「8軸積層カーボンフェース」だ。発表会であいさつした山浦敦社長は「ヤマハの独自技術と他社との連携で実現した」と新技術について説明。今回初めて化学メーカーの三菱ケミカル(東京)と共同開発したフェースだという。
軽量が特徴のカーボンシートを、これまでの定番とされてきた4軸(縦横・斜め4方向に貼り付ける)や6軸(6方向)でなく、8方向から貼り付けることで強度が向上し「フェースのどこにボールが当たっても高初速を可能にした」といい、これにより“打ち損じ”が少なくなるとしている。これをドライバー(1番ウッド)に搭載した。
山口静一常務も「アベレージ(一般)ゴルファー向けのインプレスは、“ぶっ飛び系”として市場開拓してきた。隔年でモデルチェンジしているが、その新モデルだ」と自信を見せた。
▽契約プロ「打感がいい」
ゴルファーにとって、打った時の「打感」も重要だ。ヤマハは男子では藤田寛之、今平周吾、女子では有村智恵、福田真未といったツアー優勝経験があるトッププロが契約しており、発表会で流された選手が試打する様子の映像では「打感がいい」という声が多く聞かれた。これもヤマハの8軸積層カーボンフェースの特徴だという。
発表会のトークセッションに登壇したヤマハ契約の中村香織プロは、新モデルのレディースを打ったといい「とにかく打感がいい」と強調。「ちゃんとインパクトできている(当たっている)感じがして、飛距離にも反映している」と試打の印象を話した。
7月のシニアメジャー大会「全米シニア」で、最後まで優勝を争い、2位になった藤田寛之プロもツアー先の長野県・軽井沢からリモートでトークセッションに参加。「クラブとしての完成度が高い。ポテンシャルを感じる」と新モデルを評価した。
▽2タイプを選択
「INPRES DRIVESTAR」は、ドライバー(9万7900円)に加え、フェアウェイウッド(6万500円、ユーティリティー(4万6200円)、アイアン・ウェッジ(12万3200円/4本セット)は9月20日発売。ドライバーとアイアンは、「しっかりつかまえて飛ばす」という「TYPE/D」と「つかまり過ぎをおさえて飛ばす」という「TYPE/S」がある。レディースは10月5日に発売する。