「ニッポン未来予想図」⑦ 国際観光地に必要なものは? 駐車場整備で魅力アップ

 日本各地の国際的観光地は、自動車による交通渋滞や駐車場不足、歩行環境の悪化などの問題に直面している。さまざまな対策を試行しているが、抜本的な解決に至っていない。国内外から来る多くの方々が観光地の魅力を満喫する一方で、地元ににぎわいと活性化をもたらし、環境負荷を低減する施策が求められている。そんな中、京都・鎌倉・日光という代表的観光地における駐車場整備や交通マネジメントに関する提言を行い、魅力向上に貢献したい。

「ニッポン未来予想図」⑦ 国際観光地に必要なものは? 駐車場整備で魅力アップ 画像1
京都・立体駐車場イメージ図(東山山頂公園駐車場)

 日本は、恵まれた気候により四季折々のさまざまな風景を楽しむことができ、自然遺産も多く存在する。日本独特の歴史の中で多くの文化遺産が存在し、国際的な観光地となっている場所も多い。

 しかし、それらの観光地では、自動車の集中と駐車場不足により交通渋滞が発生し、また歩行空間も十分ではないために、観光客の回遊が困難となる一方で、地元のにぎわい・活性化につながっていない側面がある。

 ここでは、季節ごとの美しい風景と歴史的文化遺産が数多く存在する「京都」、海水浴客や神社仏閣をめぐる観光客などさまざまな人々の行きかう「鎌倉」、背後に紅葉の名所でもある中禅寺湖などを抱えつつ、東照宮、二荒山神社、輪王寺(二社一寺)を中心とした観光都市「日光」を対象とする。

 それらの地域で現在、直面している問題点を整理し、問題解決に向けて、先進的な対応をしている諸外国の事例を参考に、ロードプライシングや既存駐車場の利用、情報通信技術(ICT)を活用したMobility as a Service(MaaS、マース)によるActivityとMobilityの結合や駐車場予約に関する新しいシステムの導入、そして民間資金活用も視野に入れた駐車場の新設・運営などの対策について提言を行う予定である。

「ニッポン未来予想図」⑦ 国際観光地に必要なものは? 駐車場整備で魅力アップ 画像2
京都・地下駐車場イメージ図(国道1号線地下)

自動車の流入抑制

 

 ここでは、京都への提言について内容を説明する。

 世界有数の観光都市である京都は、新型コロナウイルス感染症拡大前には、年間観光客数が5千万人を超えていた。

 このため、特定の季節や時間帯において、観光地や歴史的都心地区に観光客が集中し、道路渋滞、観光バスの路上駐停車、歩行環境の悪化などの問題が生じていた。

 これらの問題に対して、京都市では「歩くまち・京都」総合交通戦略を推進し一定の効果が得られているが、世界を代表する観光都市京都としてはさらなる改善が望まれる。

 このため、①都心・観光地の一般道路への自動車流入抑制②パーク&ライド駐車場・フリンジ駐車場の整備および2次交通システムの整備③駐車場の効率的運用、という三つの施策を一体的に行う。

 ①については、都心・観光地エリアを対象に一般道路への自動車流入抑制(エリアプライシング)を行い、自動車による入洛を極力控えてもらう。対象エリアは、JR・堀川通・今出川通・東山に囲まれた約18平方キロとし、エリア流入車両に対して通常時1000円、観光期2000円の課金を行う。

 ただ、エリア内住民・事業所の自動車は対象外とし、市民の暮らしや経済活動との両立を図る。課金収受方法としては、自動料金収受システム(ETC)と事前支払い方式の併用とする。

 ②については、都心・観光地エリア外にパーク&ライド駐車場やフリンジ駐車場を整備するとともに、2次交通システムの充実を図ることで、自動車入洛者の駐車を都心・観光地エリア外に誘導する。

 その際、まずは既存駐車場に対して何らかの工夫を加え、有効活用することから取り組む。

 例えば、鴨川西IC駐車場については、道の駅などを併設することで、ランプ直結型P&R駐車場として利用促進を図る。

 利用率が低いゼスト御池駐車場については、観光バス対応出入り口に改築することで、都心フリンジ駐車場として活用する。

 東山山頂の将軍塚駐車場については、東山観光エリアとの近接性を生かしたフリンジ駐車場として増築するとともに、駐車場と観光エリアを結ぶ2次交通システムとして「垂直エレベータ及(およ)び動く歩道付き地下連絡通路」を東山山麓に整備する。

 これらの既存駐車場有効活用だけでは観光期の駐車需要に対応できない場合には、国道1号地下駐車場の整備など公共空間を有効活用した駐車場整備が考えられる。

 ③については、駐車場空き情報検索・予約・決裁システムの導入や、駐車場情報案内システムの高度化などにより駐車場運用の効率化を図る。

「ニッポン未来予想図」⑦ 国際観光地に必要なものは? 駐車場整備で魅力アップ 画像3
京都駐車場政策(JAPIC提言案)

「国際観光都市税」

 

 さらに、パーク&ライド駐車場料金と2次交通システムの一体予約や料金割引に加え、観光施設の入場料割引など観光とモビリティーが一体となった拡張型MaaSを導入することで自動車観光の抑制と観光活性化の両立を図る。

 これらの提案を実現するため、エリアプライシングによる収入を「国際観光都市税」として、駐車場整備・運用のための財源として活用する。

 また、民間駐車場と一体となった公共駐車場の包括管理委託などにより駐車場事業の効率化を図り、官民連携による総合的な駐車政策マネジメントを行う。以上を通じて、人と地球環境に優しい持続可能な観光都市京都の実現に寄与する。

【筆者】

エスシー・マシーナリ 代表取締役社長

杉原 克郎(すぎはら・かつろう)

 

(KyodoWeekly1月17日号から転載)