NHK朝の連続テレビ小説「あすか」や「ナースのお仕事」シリーズ(フジテレビ系)、「ホタルノヒカリ」(日本テレビ系)など数多くの人気作に出演し、活躍してきた藤木直人。12月15日から上演される「奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』」には、三宅健演じるサムと共に人の心を癒やす手伝いをするトム役で出演する。藤木に、本作への意気込みや音楽への思い、さらには50歳を迎えた心境などを聞いた。
-本作は、数々の映画音楽を手掛けてきた岩代太郎さんが、演劇と音楽による新たな舞台芸術を目指し、2018年に初上演した“奏劇”シリーズの第2弾となります。孤児院で兄弟のように育ち、大人になって再会したサムとトムとキムを中心とする物語が描かれていますが、今回の“奏劇”というプロジェクトを聞いてどんな感想を持ちましたか。
正直、全くイメージが湧きませんでしたが、説明を聞いて岩代さんらしいなと思いましたし、面白そうな企画だと思いました。ただ、生い立ちや育っていく環境など、社会的な問題も描いている作品ですし、お互いの心の中にあるものがぶつかり合う話なので、難しい作品になりそうだとも感じました。
-トムという役をどのように演じたいですか。
(取材当時)まだ台本を頂いていないので具体的なことは考えてはいませんが、ただ、今回はいわゆる朗読劇になり、お客さんは声からの情報だけで想像して見るので、それを表現する難しさを今は感じています。今回は、生演奏もあるので、そうしたものに助けていただきながら世界を作っていこうと思っています。
-自分の声に対してはどんな思いがありますか。
僕の子ども時代は、今ほど自分の声を聞く機会がなかったので、初めて自分の声を聞いた時には驚きましたし、デビュー作の撮影のときに、音声さんが僕の声を聞いて「こんな声なの?」ということを言っていて…劣等感しかなかったです。もちろん、自分に足りていないところがあったからだと思いますし、自分なりに努力もしてきましたが、いまだに(劣等感は)ありますし、谷原章介みたいな低い声に憧れます(笑)。とはいえ、声も演技もその人のオリジナリティーではあると思いますし、みんな同じである必要もないもの。ただ、だからといって「これが自分らしさ」だと開き直るのではなく、求められることを表現していく必要もあると思うので、芝居は本当に難しいですよね。
昔、広末涼子さんがあるインタビューで「演技も点数が出ればいいのに」という発言をしていたことがあったんです。確かに、そうすれば結果がはっきり分かるし、自分に足りていない部分も分かる。スポーツが潔いのは、はっきりと結果が出るからですよね。
-実際に、点数が出たらいいのにと思ったことはありますか。
思わないです。もし点数が出ていて、いい点だったらそのときだけ教えてほしい(笑)。(点数を)見た方が、自分には向いてないんだと思って諦めがつくかもしれないですが、それがないからこそ自分は、今もまだ俳優を続けていられるのかもしれません。
-年の瀬が迫ってきましたが、2022年は、藤木さんにとってはどんな1年でしたか。
50歳になる節目の年でした。それに向けてライブをしたいという思いがあったので、無事に終えられて、大きな山を乗り越えたかのような安堵感があります。
-50歳になったことで、何か変化はありましたか。
何かが変わったわけということはないです。変化ということであれば、子どもが産まれたときの方が感じました。それまではこうした仕事を選んでいることもあり、ずっと“一人称”だったのですが、一つバトンを渡したような感覚がありました。俳優の仕事は、(50代になって)劣化していく自分を今後もさらし続けていかなければならないのがつらいですが、そんなことまで想像もせず、好きで飛び込んだ世界なので、折り合いをつけながらやっていくものだと思います。
-デビューした当時には、どんな将来像を想像していたのですか。
その頃は、自分が年を取ったときのことまで全く想像していなかったですね。単に成功したいとか、売れたいという思いだけでした(笑)。売れるということは、そこに当然責任も出てくるものですし、作品を背負うことにもなるという、当たり前のことすら深く考えずに、ただそう思っていたように思います。