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船でしか行けない本物の非日常!  湖上にたたずむ秘境の温泉宿 「大牧温泉観光旅館」【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】

(富山県南砺市 大牧温泉)

 寒さが骨身に染みる季節ですね。ここ最近、私の最大の楽しみは、お風呂の時間です。冷え切った体がジワジワと温まっていく心地よさは、至福そのもの。それが温泉であれば、さらにホカホカに温まりそうですよね。

 日本には約3000カ所の温泉地が存在しています。気軽に楽しめるご近所のスーパー銭湯から、風情ある温泉街にたたずむ温泉旅館まで、一口に温泉地といってもさまざまなスタイルがあります。秘境になればなるほど、アクセスはよくありませんが、その分そこでしか味わえない「非日常」の空間を体感できるのも魅力ですよね。今回は、そんな秘境の一軒宿、富山県の「庄川温泉郷大牧温泉 大牧温泉観光旅館」をご紹介します。こちらは「船でしか行けない」温泉宿です。

庄川峡遊覧船から見える眺望
「大牧温泉観光旅館」外観

 富山県南砺市に湧く大牧温泉。開湯は1183年と、800年以上の歴史を誇ります。1930年に小牧ダムの建設に伴いダムの底に沈んでしまいましたが、源泉を川の上まで引き揚げ、1931年に温泉旅館として開業。それが現在でも残る一軒宿「大牧温泉観光旅館」です。

 宿へのアクセスは船のみ。庄川沿いにある小牧港から「庄川峡遊覧船」に乗り、終点の大牧港へ、約30分のクルージングで到着します。庄川峡の絶景の中、突然現れる湖上の温泉旅館は、圧倒的な存在感。遊覧船の往路のみ、庄川峡と宿の外観が一望できるビューポイントまで船を運んでくれるうれしいサービスもあります。

「大牧温泉観光旅館」館内

 大牧港到着後、少し階段を上がると旅館の玄関が見えてきます。純和風の歴史のある温泉宿ですが、館内は新しくてきれいです。

「大浴場(男性用)」全景
「男性露天風呂」全景

 お風呂は男女合わせて5カ所。大浴場(男性用)、中浴場(女性用)、男性露天風呂、女性露天風呂、テラス風呂(男性用)と、それぞれ館内の別々の場所にあるため、湯巡り感覚で温泉を楽しむことができます。

 景色を楽しむなら河畔を望む露天風呂がおすすめ。ゆったり流れる雄大な庄川と、山々の風景を眺めながらの湯浴みは極上です。船でしか来られないため、車などの人工的な音も一切なく、静かで凛(りん)とした雰囲気。都会とは一線を画す、大自然の非日常に浸ることができます。この季節は必然的に雪見露天風呂ですね。男性なら「テラス風呂」、女性なら「女性露天風呂」で、その絶景を堪能することができます。

「テラス風呂(男性用)」全景

 泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。泉質の通り、複雑なミネラルの構成になっている温泉は、ツルツルスベスベしながらキシキシ感もある深い肌触り。無色透明なお湯には白い湯の花がゆらゆらと舞い、さわやかで甘い硫黄の香りが温泉情緒を高めてくれます。舐(な)めると、ほんのり甘塩玉子味でおいしいです。源泉が58度と高温のため加水こそしていますが、循環はしない「掛け流し」の湯づかいがうれしいところ。お湯の鮮度も良好です。

夕食一例
炊き込みご飯とお吸い物

 夕食は、富山の海の幸、山の幸をふんだんに使った会席料理。この日のメニューは、豚肉と鱈(タラ)の鍋、刺身、天ぷら、白エビのつみれ、カニ、焼きブリ、炊き込みご飯などが食卓を彩りました。富山県内の地酒やワインもラインアップされているので、料理とともに富山の味を堪能することができます。

 体が芯まで冷え切るこの季節。温泉に入って、じっくりと温まりたいものです。秘境の一軒宿で過ごす時間は、大自然の非日常を堪能でき、心身ともにほっこりできるでしょう。「船でしか行けない」少し不便なアクセスが、その旅情を高めてくれるのではないでしょうか。

【大牧温泉 大牧温泉観光旅館】
住所 富山県南砺市利賀村大牧44
電話番号 0763-82-0363
URL  https://www.oomaki.jp/

【泉質】
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)/泉温57.6度/pH:7.90/湧出状況:不明/湧出量:不明/加水:あり/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆掛け流し

【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,400以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。
https://note.com/ayumukomatsu13/