ピンク・フロイドの名盤『狂気』(原題:The Dark Side of the Moon)の50周年記念デラックス・ボックス・セットが3月24日(金)に発売される。
ビルボード200に15年間にわたりチャート・インした史上空前のロングセラーにして、売り上げ総数が5000万枚以上というモンスター・アルバムだ。
「富」、「紛争」、「狂気」、「浪費される人生」、「死」など多様なテーマを扱った作品として知られている(2020年5月23日付『ローリング・ストーン』誌ウェブ版)。
ピンク・フロイドにとって8作目となるスタジオ・アルバムである『狂気』は1972年と1973年にロンドンのEMIスタジオ(現在のアビー・ロード・スタジオ)でレコーディングされ、1973年3月1日にアメリカ、3月16日にイギリスでリリースされた。
才気あふれるデザイン集団「ヒプノシス」のストーム・トーガソンがデザインし、グラフィック・デザイナーのジョージ・ハーディーが描いた、「暗黒の宇宙」を思わせるような背景に「光のプリズム」が浮かび上がるアートワークはつとに有名だ。
50周年記念盤のデラックス・ボックス・セットには、長年ピンク・フロイドの音をつかさどってきたジェームス・ガスリーによる2023年最新リマスタリングを新たに施したCDとLPに加え、5.1ミックスとリマスタリングされたステレオ・バージョン、そしてアトモス・ミックスを収録したブルーレイ・オーディオとDVDオーディオが含まれる。
また、同セットには『狂気:ライヴ・アット・ウェンブリー1974』のCDとLPも収録。
さらに1972~1975年の全英・全米ツアーからレア・未発表写真を収録した160ページ・ハードカバー本、オリジナル盤の76ページ楽譜集、7インチ・シングル2枚(「マネー/望みの色を」と「アス・アンド・ゼム/タイム」)、1973年にロンドン・プラネタリウムで行われた『狂気』試聴会のEMI制作パンフレットおよび招待状のレプリカなど豪華特典も収録される(ボックス・セットは輸入盤のみ)。
『狂気―50周年記念盤ボックス・セット』は輸入盤のみの発売で、品番は「19658713451」。価格はメーカーが希望小売価格を決めない「オープンプライス」。
『ローリング・ストーン』によると、『狂気』は、アビー・ロードの専属エンジニアであるアラン・パーソンズのレコーディング技術と、ミキシングにおけるベテラン・プロデューサーのクリス・トーマスの手による「大脳を刺激するようなランドスケープ」、そしてロジャー・ウォーターズによる「人間の内面を深く掘り下げる歌詞」が魅力だ。
バンドのベーシストであるロジャー・ウォーターズは、『狂気』で初めてアルバム全曲の歌詞を一人で手がけることによって、コンセプトに基づいた一貫性を持たせることに成功した。ウォーターズはこのアルバムから実質的なバンドのリーダーとなる。
『狂気』はスタジオ・アルバムだが、実はアルバムが発表される1年以上前に、収録されることになる全曲が収録される順番通りにライブ演奏されていた。
3月24日、ボックス・セットと同時発売で、1974年11月のウインター・ツアーでの『狂気』全曲演奏を収録した『狂気:ライヴ・アット・ウェンブリー1974』(The Dark Side of the Moon-Live at Wembley Empire Pool、London、1974)もCDとLP(初LP)で個別にリリースされる。独立したアルバムとして入手可能になるのは今回が初めて。
このライブ盤のCDとLPは日本盤もリリースが予定されている。
『狂気』は、ピンク・フロイドにとって初の全米チャートでの1位を獲得。シングル・カットされた「マネー」はラジオ局で頻繁にオンエアされたこともあり、ビルボードのヒット・チャートで最高13位を記録する。この曲は「メンフィス産R&B界の巨匠ブッカー・T&・ザ・MG’sにインスパイアされているという」(『ローリング・ストーン』)。
なおトリビアだが、アルバムの最後を飾る「狂気日食」(Eclipse)の終盤の部分では、マイクが拾ってしまった、スタジオ内で流れていたビートルズの「涙の乗車券」のオーケストラ・バージョンの音を聞くことができるという。
50周年記念盤のリリースを祝して、ピンク・フロイドが新世代のアニメーターたちに対し、『狂気』の収録10曲のミュージック・ビデオを募るコンテストも行われる。アニメーターはアルバム1曲につき1本、計10本までビデオをエントリーでき、勝者はピンク・フロイドのニック・メイスン、クリエーティブ・ディレクターのオーブリー・“ポー”・パウエル、英国映画協会らによる選考委員会が選出する。応募締め切り日は2023年11月30日。