日常生活が一瞬にして壊れてしまう災害時、必要なものを数え上げればきりがないが、中でも水は必要不可欠。破壊されたインフラの復旧には時間がかかるから、備えなければならないが、十分な備えには不安がある人がほとんどかもしれない。被災地で小規模分散型水循環システムを用いた入浴や手洗いなどの支援活動をしているWOTA(東京)の『能登半島地震、及び国難級災害における「災害水ストレス」レポート(第一報)』によると、今回の地震で1カ月以上の断水を経験した人は10万人に上っている。
災害時には水道をはじめとするライフラインの一部が停止し、災害規模やインフラ老朽化の度合いによっては復旧までに数カ月から半年もの時間を要する。能登半島地震では主要な浄水場や管路が被害を受けた結果、広範囲、しかも長期間の断水が発生。2カ月以上が経過した現在でも、1万7250世帯が断水の状態にあると報告されており(厚労省調べ)、ライフラインの被害が依然として長期化している。そこで首都直下地震や南海トラフ地震など、今後想定される“国難級災害”における「災害水ストレス人口」の試算を実施した。入浴や手洗い機会の不足による感染症のまん延や、衛生的なトイレや洗濯へのアクセス不足なども「災害水ストレス」として捉え、広域断水で自宅でも近隣の避難場所でも十分な生活用水を確保できない人の数を「災害水ストレス人口」と定義した。
それによると、今後高い確率で発生するとされている首都直下地震では今回の約50倍、南海トラフ巨大地震では約100倍もの断水被害が想定されている。過去災害のデータや内閣府中央防災会議の被害想定などを踏まえた分析によれば、「災害水ストレス人口」は首都直下地震では発災1週間後に480万人、南海トラフ巨大地震では1290万人にも上る可能性があるという。
家庭での水の備えは、どんなにがんばっても長期間の断水に対応するのは難しい。社会全体での対策をさらに進める必要がありそうだ。