夏休みはまだ遠い。息抜きに週末の温泉に行くなら、露天風呂から緑が楽しめたらうれしい。神奈川県の箱根にこの5月オープンしたnazuna箱根宮ノ下に泊まってみた。国内外の観光客でごった返す箱根湯本の駅を過ぎて、しばらく山を登ったところ。広々した部屋と露天風呂でちょっとだけ日常を離れる一泊を。
東京からなら車で約1時間半。“旅行”と構えずにサクッと足を伸ばせる気軽な場所だ。箱根国道1号を上っていくと、左手に小さな「nazuna」の表示。かなり急坂の細い道だから、車高の低い車は厳しいかもしれない。部屋数の少ない小さな宿は、京都の町家の要素を取り入れているといい、木のぬくもりと黒が基調の落ち着いた内装だ。到着すると、カウンター形式のいろり端で、焙(ほう)じ立てのほうじ茶をいれてもらえる。和菓子や地元の名物、かまぼこなど、ちょっとしたおつまみを楽しみながらチェックインを待つ。

すべての部屋に露天や半露天のお風呂がついている。筆者が泊まったのはデラックスツイン「三条」という部屋。部屋のドアを開けてからリビングにたどり着くまでの廊下は、引き戸や明かりなどすべてに木のぬくもりが感じられる、もったいないほどのぜいたくなスペース。テラス全面がかけ流しの露天風呂。友人や家族4人で入っても十分に足が伸ばせる広々サイズだ。国道を走る車が下に見えるからテラスは曇りガラスになっているものの、目の前に立ち上がる山の緑で目の保養をしながらの入浴。79平米の部屋には、ゆったりできるソファやコーヒーテーブル、ベッドのほかに畳の和室もある。

チェックインから夕刻まで、下階ではさまざまな飲みもののフリーフローを楽しめるし、部屋に持って上がることもできる。露天で往路の疲れをいやしたら、夕食は東京・恵比寿のイタリアンシェフが監修するコース。相州牛や箱根山麓豚のしゃぶしゃぶがメインだが、おぼろ豆腐のカプレーゼやトマトのリゾットなど、さりげなくイタリアンな味がちりばめられている。一見したところ海外からの観光客も多く、英語のメニューも用意されているから、海外からの友人と遊びに行っても、面倒な食材の通訳をしないで済みそうだ。
朝食も、いろり端でアユや地元の野菜を焼きながらのシンプルな食卓。夜も朝も、いわゆる“温泉旅館”の食事の枠にはおさまらない自由で軽快な感じに、インバウンド時代のちょっと新しい箱根を垣間見た一泊だった。

(text by coco.g)