2024年の国内旅行者延べ数は5億4千万人、宿泊費の高騰などもありコロナ禍前の19年の水準までは戻っていない。旅行形態では、近年一人旅が増加傾向にあるが、全体の約半数を家族旅行が占めており、家族の動向が国内旅行市場を左右すると言ってもいい。インバウンド(訪日客)が注目される昨今ではあるが、日本における旅行消費額の76%は日本人によるものであり、今あらためて国内の家族旅行の意義を考えてみたい。
まず、家族旅行に期待されるものは何だろうか。
マイナビが行った「共働き子育て層の家族旅行調査」(24年)によれば、家族旅行の目的で最も多いのは「親子の思い出作り」「子どもを楽しませる」となっている。筆者が以前に行った家族旅行の調査でも、旅行者が実感した家族旅行の意義には「家族が共に過ごした時間」や「共通体験」などの項目が挙がる。
現代では同居の家族であっても普段の生活で共に過ごす時間は意外に少なく、平日で平均2時間19分、休日で4時間19分(シチズン「親子のふれあい時間」調査、25年)しかないという。
一方、家族旅行の場合は家を出てから移動、観光、食事、宿泊と旅行中は家族がほぼ一緒に過ごし、普段の何倍もの時間と体験を共有する。
つまり、家族旅行は旅行者にとって普段なかなか取れない時間の共有という役割を果たすとともに、事業者には国内旅行消費の屋台骨、観光地の自治体には若い世代の交流人口の獲得機会として〝三方よし〟となるものであり、産官をあげてもっと活性化に力を入れていい。
この時、家族旅行で特に課題となるのはお金と休みだ。国内の宿泊旅行消費額は19年に平均6万692円だったものが、24年には7万7千768円と3割近く高くなっており、子ども連れの若い家族には手が届きにくい。また、休みについても家族が揃(そろ)って休める土日・祝日は価格面、混雑などからハードルが高く、平日でも家族旅行が可能となるような環境整備が必要だ。
その対策として、金銭面では観光地の自治体が地域文化の体験や交流などを条件に、将来の交流人口づくりの一環として一定の補助をしてもよいのではないか。休みについてはすでに取り組みがはじまっている自治体もあり、愛知県は「休み方改革」として家族と一緒に体験や探究の学びを行う場合は学校を欠席扱いにしない〝ラーケーション(ラーニング+バケーションの造語)〟の導入に向けて動き出している。
家族旅行は従来からある旅行形態だが、実は旅行者・事業者・地域を今日的な〝三方よし〟にできる可能性を持っている。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.44からの転載】









