「ことだま」宿る羽生結弦のメッセージ 名言がもたらす心の平穏と潤い

 フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌冬季オリンピックを2連覇した羽生結弦選手が、12月7日に31歳の誕生日を迎える。22年のプロ転向後は、自らが総合演出して単独で出演した「PROLOGUE」や、言葉とスケートで物語を紡ぐアイスショー「ICE STORY」を企画。その第1弾として、スケーターでは史上初となる単独の東京ドーム公演「GIFT」を成功させ、第3弾「Echoes of Life」では自らSF風の「小説」を執筆した。滑りという身体表現の枠を超え「命とは?」「わたしとは?」といった哲学的な問いを模索。数々の名言を残してきた羽生選手が「言葉」の力を深め、新たな世界を切り開いている。

31 Messages from YUZU

 羽生選手と「言葉」にまつわるエピソードがある。幼少期、彼の言葉が周囲を驚かせた。母親のおなかの中にいた時のことを、鮮明に覚えていて口にしたのだという。母の問いかけ、愛に満ちた語り、響いていた音楽…。科学的な根拠はないとされているものの「胎内記憶」と呼ばれる神秘的な現象は、希代の表現者の「原点」なのかもしれない。

 幼い頃から「生と死」について思いを巡らせてきた。2011年に起きた東日本大震災の経験は人生観に大きな影響を与え、早稲田大学で生命倫理を学んだ。「GIFT」では初めて思考、内面を言語化して自らの半生とこれから―を表現。東京ドームに集まった3万5千人だけでなく、ライブ配信で世界中のファンにも思いを届けた。「Echoes of Life」は「生きるということについて、皆さんなりの答えが出せるような、哲学ができるような公演にしたい」との思いを形にしたもの。自問自答を繰り返しながら、分断が嘆かれる世界に希望を見いだしていった。

 東日本大震災からの復興を願う「notte stellata」や「能登半島復興支援チャリティー演技会」に出演し、社会貢献活動でも存在感を示している。「羽生結弦」を語る上で、プログラムや演技といった要素だけでなく、彼の思いが詰まった「言葉」とその背景を知ることは大きな意味を持つだろう。言葉に宿る魂、不思議な力…。「ことだま」に触れることで”超一流のアスリート”という使い古された賛辞では表現し切れない、唯一無二の存在の思考が心に響き、新たな視点、ひらめきをもたらしてくれる。

 選手時代、そしてプロスケーターとして歩みを重ねるこの数年の名言を集めた日めくりカレンダー「31 Messages from YUZU」が、12月7日に全国の書店やAmazon楽天ブックスなどで発売される。カレンダーは卓上型で計38枚。共同通信社が展開するフィギュアスケート専門情報サイト「Deep Edge Plus」が監修し、31日分の日めくりカレンダーの1日1日に羽生選手がこれまで紡いできた珠玉の言葉を厳選して掲載した。その背景などを解説する文章も添えられている。

 

 一例を紹介する。

1日「努力はウソをつく でも、無駄にはならない」

31 Messages from YUZU sample_day1

 これは、2016年のテレビ番組で「未来のヒーローたち」に贈ったメッセージだった。全ての努力が報われるわけではない。類いまれな才能を持つ羽生選手も、何度となく壁にはね返された。けがやアクシデントに苦しまされることもあった。2022年の北京冬季オリンピック。フリーで挑んだクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)は転倒に終わったが、主要国際大会で初めて「4A」の文字を歴史に刻んだ。

羽生選手は、その時もこう語っている。
 「報われない努力だったかもしれないけど、今できるベスト。努力の意味や価値を考えさせられる、これからの人生に大切な時間になった」
そして、カレンダーの解説文は、自ら次の言葉で締めくくった。
「努力を重ねたからこそ、見えてくる世界はある」

 

 月終わり、31日には次の言葉が掲載されている。

31日「『いま』という時間を、まだ見えることのない『未来』のために」

 

31 Messages from YUZU sample_day31

 いつだって明るい未来を思い描き、いまを大切にする羽生選手。この日の解説文の最後の2文は、カレンダーの購入者だけに届く、彼からのメッセージだ。

 カレンダーに収められた31の羽生語録は、世界中のファンに届けるために、英語訳と中国語訳が特設サイトで公開されている。購入者はカレンダーに掲載された二次元コードからパスワードなどを入力した上で閲覧できる。

 他に、羽生選手の直筆メッセージが掲載されたページもある。弱気になりそうな自分を勇気づけたい時、大切な日をお祝いしたい時、幸運を祈りたい時、羽生さんの願いに共鳴したい時…。さまざまな心境、シチュエーションに応じて1日に平穏や潤いを与えてくれそうだ。

■羽生結弦日めくりカレンダー「31 Messages from YUZU」

2025年12月7日発売

31 Messages from YUZU

定価:3,850円(本体3,500円+税10%)
特典:シール、ステッカー
企画:(株) RIS/監修:「Deep Edge Plus」編集部/発行:(株)共同通信社
※ご購入は全国の書店、Amazon楽天ブックス