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AI・タイパ時代にあえて現場へ――第41回大同生命地域研究賞、当事者の視線から世界を問い直す研究者・団体を顕彰

地域研究賞を受賞した京都大学名誉教授の太田至さん

 アフリカや中東、東南アジアなど世界各地でフィールドワークを重ねてきた研究者や団体をたたえる第41回大同生命地域研究賞の贈呈式が7月22日、大阪市内で開かれた。

 同賞は1986年に創設され、地域研究を通じて国際相互理解に貢献した研究者や団体を顕彰している。今年は16件の推薦の中から、「地域研究賞」1人、「地域研究奨励賞」3人、「地域研究特別賞」1団体が選ばれた。

 式典では、選考委員長による選考経過報告に続き、主催者を代表して大同生命国際文化基金の北原睦朗理事長があいさつした。AIなどの技術の進歩で世界中の情報に瞬時にアクセスできる時代になった一方、「情報を得ることと、その地域を深く理解することはイコールではない」と強調。現場に足を運ぶ地域研究の重要性を訴えた。

祝辞を述べる公益財団法人大同生命国際文化基金の北原睦朗理事長

▽アフリカ研究の太田至さんが地域研究賞

 最高賞となる「地域研究賞」を受賞したのは、京都大学名誉教授の太田至さん。ケニア北部で40年以上にわたり牧畜民トゥルカナの社会を調査。人と家畜の関係性に着目した研究を展開したほか、「アフリカ潜在力プロジェクト」を主導し、アフリカ社会が持つ共生や紛争解決の知恵を明らかにしてきたことが評価された。

 太田さんは「大学院に入学して50年、ケニアで最初に調査をしてから48年になります。研究を支えてくださった先生方や国内外の仲間、そして何より現地の皆さんのおかげです」と振り返り、長年支えてくれた人々への感謝を語った。

公益財団法人大同生命国際文化基金の北原睦朗理事長から地域研究賞を受け取る京都大学名誉教授の太田至さん(左)

▽フィリピン・イラン・西アフリカ研究者に奨励賞

 「地域研究奨励賞」は3人が受賞した。

 東京外国語大学大学院教授の日下渉さんは、フィリピン・マニラでフィールドワークを重ね、都市貧困層の視点からポピュリズム政治を分析。ドゥテルテ政権を支えた社会的背景を解明した研究が高く評価された。

 日下さんは、「地域研究は今、タイパやコスパが重視される風潮や、他者への無関心という逆風の中にあります。それでも現地に足を運び、異なる人々と真摯に向き合う研究を、民間企業が長年支援してくださっていることに深く感銘を受けています」と語った。

「地域研究奨励賞」を受賞した東京外国語大学大学院教授の日下渉さん(左)

 国立民族学博物館准教授の黒田賢治さんは、2002年からイランで調査を続け、シーア派宗教界や政治組織の動態を実証的に研究。現地調査が難しい地域で積み重ねてきた成果が評価された。

 黒田さんは「私が何かを成し遂げたというより、貴重な時間を割いて教えてくださった現地の方々の思いを文章にまとめた結果です。数時間前にも米軍の攻撃があったイランには、今も知人や大変お世話になった方々が暮らしています。これからもイラン研究を続けたい」と話した。

「地域研究奨励賞」を受賞した国立民族学博物館准教授の黒田賢治さん(左)

 法政大学教授の友松夕香さんは、西アフリカでの調査を通じて、開発政策やジェンダー、グローバル格差を分析。開発や国際協力を当事者の視点から見つめ直す新たな知見を示した。

 「AI時代だからこそ地域研究の時代が来たと感じています。地域研究は現場の空気感や何気ない会話から問いを見つけ、世界に新しい見方を提供できます。今後も現場で学びつつ精進してまいります」と力強く語った。

「地域研究奨励賞」を受賞した法政大学教授の友松夕香さん(左)

▽モザンビークの武器アートで平和教育を行う市民活動に特別賞

 「地域研究特別賞」は、特定非営利活動法人四国グローバルネットワークが受賞した。同団体は、愛媛県から放置自転車やミシンなどを交換物資として送り、モザンビーク内戦後の「銃を鍬に」プロジェクトを支援。日本国内では武器アートの展示や教育活動を通じて平和への理解を広げてきたことが評価された。

 共同代表の竹内よし子さんは、「『人は言われずとも必ず死ぬのだから、わざわざ殺さなくていい』というモザンビークの武器アートのアーティストの言葉を聞き、このメッセージを届けなくてはと思いました。これからも市民レベルで地道に続けていきたい」と決意を述べた。

「地域研究特別賞」を受賞した特定非営利活動法人四国グローバルネットワークの共同代表・竹内よし子さん(左)

 人々の暮らしや価値観、社会の機微は現場に身を置いてこそ見えてくる。贈呈式で、フィールドワークに根差した地域研究の意義が改めて示された。