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泊まれる遺跡、よみがえる図書館 公共資産、民間の力で再生

 公園や古くなった公共施設に民間の資金や運営の力を取り入れ、使われ方そのものを変える官民連携事業が徐々に広がりをみせている。佐賀県の吉野ヶ里歴史公園では2026年3月に宿泊施設を含む体験型複合施設が開業し、来園者は開園以来最多を記録した。ほかにも、閉館した図書館を民間企業が改修して働く場に変えたり、公園に喫茶店を招いて長く過ごせる場所にしたりする試みも各地で始まっている。

 株式会社共同通信社の全国自治体調査で11日までにこうした実態が浮かび上がった。2023年度以降に最も力を入れた官民連携事業・構想の分野を尋ねたところ、197自治体が回答した「地方創生・地域活性化・資産活用」が最も多く、このうち34が「空き家・公有資産利活用」を挙げている。つくって維持するだけだった公共資産を、人が訪れ、使い続ける場所へどう変えていけるか――。

吉野ヶ里に泊まる

 「行政主導で進めるには、人的資源(人やノウハウ)や財政面が不足している」。東海地方のある市は、官民連携についてこう指摘する。自治体だけでは人材やノウハウを補いきれないという課題がある中、民間との対話を重ねて事業化に進んだ例がある。

 佐賀県の吉野ヶ里歴史公園(吉野ヶ里町・神埼市)で2026年3月、体験型複合施設「スノーピーク グラウンズ 吉野ヶ里」が開業した。アウトドア用品メーカーのスノーピーク(新潟県三条市)を代表企業とする共同企業体を、県が公募で選定。開業から年度末までの約2週間で公園には約9万人が訪れ、2025年度全体の来園者は約78万人と2001年の開園以来最多を記録した。4月には園内での宿泊も始まった。

 実は、県は公募に至るまでじっくりと時間をかけていた。公募に先立つ21年度、検討会を設けて公園利用者のニーズを調査。さらに、事業化の可能性や条件を事業者との対話で探る「サウンディング」と呼ばれる市場調査も実施した。その結果を踏まえて整備方針を固め、公募へ進んだ。

 官民連携により、県は公園の一部の整備と運営を民間事業者に任せ、店舗や飲食施設、キャンプ場、コテージなどを公園内に設けることにした。民間が施設を整備・運営して収益を上げながら、その後の維持管理も担う。こうして歴史公園に食事、宿泊、アウトドアを楽しむ機能が加わった。

小さな図書館の再出発

 民間の力を借りたくても、相手が見つからない――。関東地方のある市は、厳しい財政状況の中で官民連携を進めたいとしながら、「推進可能な事業者が見つからない」と全国調査に回答している。小規模自治体からも「施設規模等も小さくなりがちなのでコストメリットを生みにくい」との声が上がる。

 長野県辰野町では、2021年12月に閉館した築約70年の旧小野図書館を壊さず、歴史的な外観を残して民間に改修と運営を任せた。公募で選んだのは、町内のまちづくり会社goodhood(グッドフッド)。同社は建物を改修し、複合施設「むらとしょ」として再生。書店や私設図書館、多世代型ワークスペースなどを設け、働き、学び、交流する機能を加えた。

 goodhoodは改修からその後の運営までを担い、改修費や維持管理費も負担する。町からの支出はなく、逆に同社が町へ年間15万円以上の賃借料を支払う仕組みだ。

公園に喫茶店

 「連携による官民双方のメリットを見いだせるように意見交換を重ね、合致した場合に連携している」。首都圏のある市は、連携に踏み切る条件をこう説明する。行政と民間の利点が重なる場所をどこにつくるか。公園を舞台にした例がある。

 大阪府大阪狭山市は、副池オアシス公園の再整備に当たり、民間事業者を一般公募し、コメダ(名古屋市)をパートナー事業者に選定。市が遊具や園路などを整え、コメダが「コメダ珈琲店 狭山池店」と駐車場を整備した。

 店舗は2022年4月に開店した。公園に売店や喫茶コーナーが置かれることは珍しくないが、街なかでも親しまれているチェーン店が入ることで、人が立ち寄りやすくなり、散歩や遊びに「休む」「人を待つ」「語らう」という過ごし方が加わった。

 連携は開店で終わらない。コメダは現在も公園駐車場の管理や周辺の清掃活動などを行い、公園一帯の管理に関わっている。喫茶店の出店を、公園の維持運営まで広げた連携だ。(株式会社共同通信社 垂見和磨)