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江戸街道プロジェクト 小さな観光地をテーマでつなぐ

 前年比ではやや減少しているとはいえ、今年も相変わらず訪日インバウンドは好調で、6月単月では314万8600人だった。その多くは東京、大阪、京都、福岡などの都市部の観光地に集中しており、地方分散が進まない状況もあまり改善していない。

 一方で、観光庁の調査では、旅行目的として地方観光に関するものを挙げるインバウンド旅行者は増えており、来日後「次回行いたいこと」として、2025年と2019年との比較で「日本の酒を飲む」が10ポイント増、「自然・景勝地観光」が7ポイント増、「自然・農山漁村体験」が4ポイント増などが大きく増加している。地方にとって追い風ともいえる中、実際の誘客が進まない原因の一つにプロモーション不足がある。地方観光は一つ一つの取り組みが小さくエリアも分散しているためプロモーション活動もそれぞれで、〝古都・京都〟のような統一した観光イメージを発信することが難しい。

 そんな中で、小さな観光地をテーマでつなぎ誘客を図ろうとする『江戸街道プロジェクト(Edo Shogun Roads)』という取り組みが始まっている。関東運輸局が、東海道などをはじめとした五街道とその脇往還(五街道以外の主要な街道)沿いに点在する観光地を、街道ごとにプロモーションしていこうというものだ。

 観光の視点であらためて街道を見てみると、東京近郊にも酒蔵見学や農山漁村体験などいわゆる地方観光ができるところは意外に多い。例えば、日光街道沿いの小山には広い田んぼの真ん中にぽつんと1軒建っている民泊施設や、見学・体験ができる老舗の酒蔵などがあり、水戸街道周辺の常陸大宮や笠間にはグリーンツーリズムが体験できる複数の農家が存在する。他にも成田街道沿いの佐倉には武家屋敷が残り、甲州街道沿いにはミシュランにも評価された高尾山やワイナリーがあるなど、地方らしい魅力を持つスポットが数多く点在している。

 いずれも小さな観光地なのでこれまでは首都圏の日帰り客が中心で、インバウンド向けの大々的なプロモーションや誘客が進まなかったが、江戸街道というテーマによりストーリーと統一性が生まれ、各地が一丸となった取り組みにできる。現在は関東の観光地が中心だが、定着すれば東北や関西まで結べるだろう。

 海外ではドイツのロマンチック街道やカナダのメープル街道のように、テーマでブランド化し小さな地方観光地を結ぶことで誘客に成功している例もある。東京へのインバウンド客の一極集中を改善するためにもぜひ成功させたいプロジェクトだ。
(東洋大学国際観光学部教授 森下晶美)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.31からの転載】