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大学進学を諦めさせない 3期生52人に奨学金を提供 COACH Dream It Real

 ハンドバッグやファッションで知られる「COACH」や「kate spade new york」を展開するタペストリー・ジャパン合同会社(東京都港区)。華やかなファッション界の第一線で活躍する同社が、実は日本の若者たちが直面する「教育格差」や「進学の壁」に対し、継続的で手厚い社会貢献活動を行っていることをご存じだろうか。

 米ニューヨークに本部を置く「コーチ財団」は、これまで世界中の非営利団体と連携し、若者の将来を支援するグローバル社会貢献イニシアチブ「Dream It Real(夢を現実にする)」を推進してきた。

 グローバルではこれまでに8000件以上の奨学金を提供しており、2030年までに1万件を目指すという大きな取り組みだ。

 日本では“どんな環境に生まれ育っても意欲と創造性を育める社会”を目指す認定NPO法人「カタリバ」(東京都中野区、代表理事:今村久美氏)とパートナーシップ     を組み、給付型(返済不要)の奨学金プログラムを運営。このプログラムが今年、3年目を迎えた。

▽今年は52人に奨学金提供

 本プログラムのステップを振り返ると、日本の若者が必要としている支援の形に合わせて着実に進化してきたことが分かる。

 1年目の2024年は、カタリバの既存プログラムに参加していた高校生を中心に、高等教育を目指す24人の生徒を支援。

 2年目となる昨年は応募資格を全国へ拡大。カタリバと接点のなかった生徒にも届くようになり、当初目標の50人を上回る75人へ奨学金を支給した。

 最初の2年間で提供された奨学金は約100件。そして3年目の今年、コーチ財団の寄付による支援で奨学金を受け取る生徒は52人。コーチ財団以外の寄付を受けてカタリバが奨学金を給付する生徒の人数も加えると、過去最多の110人に上る。そのうち約8割が公募によって集まった生徒たちだ。

キックオフイベントでは一人ひとりに証書が手渡された          

▽手厚い伴走支援

 この奨学金プログラムの最大の特長は、単に「お金を渡して終わり」ではない点だ。奨学金と聞くと「学費の給付」を思い浮かべがちだが、同プログラムの最大の特長は「手厚い伴走支援」にある。

 現代の若者が直面する障壁は、単に経済的な問題だけにとどまらない。特に外国籍に由来する家庭環境や地方在住、経済困窮などの事情を抱える生徒たちは、複雑な申請手続きに苦しんだり、在留資格要件によって公的奨学金の対象外となったりするケースもある。さらに「進学後の資金計画が立てられない」「将来の返済への強い不安」など、心の負荷も大きい。

 本プログラムでは、高校3年時の受験費用や大学合格後の学費支援や入学準備(引っ越しなど含む)に加え、申請段階からの個別サポート、資金計画のワークショップ、大学生活や自立に向けた相談体制などを一貫して提供している。

 さらに注目すべきは「先輩から後輩へ」と紡がれる温かいコミュニティーの存在だ。すでに大学生活を送っている1期生・2期生の奨学生たちが、新しく入ってきた3期生の悩みを聞いたりアドバイスを送ったりするサポート態勢が自然発生的に生まれている。

 環境の違いや進路の悩みに直面したとき、「同じ境遇を乗り越えた先輩」に相談できる場があることは、若者たちにとってお金以上に大きな心の支えとなっているようだ。

先輩奨学生たちも悩みを聞いたりアドバイスしたりするなど3期生に寄り添う

 ▽コミュニティー作りを大切に

 8月29日、コーチ ブランドを日本で展開するタペストリー・ジャパン本社で開催された第3期キックオフイベントには、北は宮城から南は福岡まで、全国から集まった3期生の奨学生約30人が参加した。緊張した面持ちで会場に入った生徒たちだったが、ウエルカムメッセージや自己紹介セッション、ランチ交流会を通じて少しずつ表情がほころんでいった。

 冒頭、タペストリー・ジャパンの小池蘭ディレクターが「Dream It Realは、単なる経済支援ではありません。実践的な伴走を通じたコミュニティー作りを大切にしています。3期目となる奨学生のみなさんの成長を、これまでの奨学生といっしょになって見届けていきたいと思います」とあいさつした。

タペストリー・ジャパンの小池蘭氏

 午後のワークショップでは「目標設定」や「将来への備え(フィナンシャルプランニングや個人目標)」をテーマに、現在抱えている問題や進路の悩み、将来の夢について本音で語り合った。会場には1期生・2期生の奨学生たちも駆けつけ、大学受験を前にした生徒たちの悩みを聞いたり将来の相談に乗ったりしていた。

 コーチ財団からは「Dream It Realは、若者が自信、人とのつながり、選択肢を持って自らの夢を追求できる道筋をつくる取り組みです。日本でこの取り組みが成長してきたことを誇りに思うとともに、自らの未来を描き続ける奨学生たちから大きな刺激を受けています」とメッセージが送られた。

ワークショップではそれぞれの悩みや目標について振り返った

▽未来の選択肢狭めない

 今後について、カタリバは「進学に障壁を抱える若者には、経済支援以上に『寄り添い続ける存在』が必要です。タペストリー・ジャパンやコーチ財団とのパートナーシップを通じ、奨学生が自立に向けて自分自身の道を形づくる自信を育めるプログラムを築いていきます」としている。

NPO法人カタリバの渡邊慎也氏

 タペストリー・ジャパンは、奨学金支給にとどまらず、希望者への就労経験やオフィスインターンシップなど、若者のキャリア形成に寄り添う取り組みも視野に入れている。多様性を重んじるグローバル企業と、若者の伴走支援に長けたNPOが手を取り合うことで、従来の奨学金制度にはなかった新しい「居場所と挑戦の場」が生まれている。

 生まれ育った環境によって未来の選択肢が狭められてはならない―。「Dream It Real」の名の通り、若者たちが自らの力で夢を現実に変えていくための挑戦は、これからも続いていく。