ライフスタイル

ベランダの謎の物体 【辛酸なめ子 コラム 直線・曲線・斜め線】

 他人の映え写真を見せられてもあまりおもしろくないので、インスタグラムでは主にかわいい動物の写真や動画を眺める日々。最近も、花を食べるつぶらな瞳のナキウサギ、ボリビアで見つかった新種の猫、機嫌がよくなると歌うタヌキ、サボテン上で眠るボブキャット、大きな耳のオオミミギツネなどの動画に癒やされました。そんなある日、ベランダで不気味な物体Xを目撃したのです。

 洗濯物を干そうとマンションのベランダに出たら、前見た時にはなかった黄土色の物体が目に入りました。数十センチ四方の大きさの、黄土色の塊と白っぽい円形のものが混じっている謎のヘドロのようなもの。ホラーみも漂っています。とにかくなんとかしなくてはと思い、半泣きでビニール袋に入れて処分。前日に悪夢を見たので、呪詛をかけられているのかもしれない、と一瞬思いました。または宇宙生物かと…。

 少し余裕が出てきたので「ベランダ 木の実」で検索。すると、動物のフン説が浮上。色や大きさから推察すると、ハクビシン説が濃厚です。動物好きオーラを発しているせいで、実際の動物を引き寄せてしまったのでしょうか・・・。謎の物体の正体が判明しそうでホッとしましたが、23区内のマンションに知らない間にハクビシンがきたのが不思議です。10年以上前、電線の上をのそのそ歩くハクビシンを目撃したことがあり、そんなふうに電線や雨樋を伝ってきたのでしょうか。自宅のベランダがハクビシンのトイレとして選ばれたのもショックです。今後、うちのベランダが近隣のハクビシンの共同トイレとして使われないことを祈るばかりです。

©️2026 Nameko Shinsan

 調べたら、都内でハクビシンの数が増加傾向にあるようです。住宅街の庭木やペットフードや生ごみなど、食べ物が豊富だから、という理由が考えられています。都心を選んで暮らしている動物はかなり賢くて、パン屋やクッキー店の前でスタンバイしている鳩を見たことも何度かあります。

 ところでフンというと「運がつく」みたいなイメージで、金運が上がらないか一瞬期待しましたが、現実的にはハクビシンのフンは感染症や寄生虫のリスクもあるので、取扱注意だそうです。少しでもいい意味を探したくて「ハクビシン スピリチュアル」で検索したら「額から鼻先にかけて通る白いラインは第6チャクラと直結している」「ハクビシンは『直感の目覚め』を告げる存在」という説を発見。朝、驚きと恐怖で、直感かどうかはわかりませんが、一気に眠気は覚めました。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.38からの転載】

しんさん・なめこ 漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に『女子校育ち』(筑摩書房)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『電車のおじさん』(小学館)、『大人のマナー術』(光文社新書)など多数。近著に『この人生、前世のせいってことにしていいですか』(幻冬舎文庫)がある。