目に見える身体は食べ物でできている。これだけは知っておきたい消化の智慧
毎日摂る食事は、人間の生命を維持するために欠かすことができません。美味しいものをお腹いっぱい食べたいけれど、あとで胃がもたれる、太ってしまうなど、不調は避けたいものです。今回は、食事と消化を中心に、古典ヨガの解剖学で人間の身体について理解を深め、食べ方で健康になる方法をご紹介します。
人間のカラダは食べ物でできている
古典ヨガの解剖学では、人間の体は目に見える肉体など5つの鞘(さや)でできていると伝えられています。
1.アンナマヤ・コーシャ(Food)
2.プラーナマヤ・コーシャ(Energy)
3.マノマヤ・コーシャ(Mind)
4.ヴィジニャーナマヤ・コーシャ(Intellect)
5.アーナンダマヤ・コーシャ(Ananda)
一般的に肉体と言われているのは、1.のアンナマヤコーシャです。 2.以降の、気の流れや心の動き、理知や幸福感など、目に見えない鞘と密接につながり、痛みや疾患などの不調となって現れるのが肉体です。肉体の健康は、健康経営でも注目されている「QOL(クオリティオブライフ)」を大きく左右します。筋肉・骨や内臓などで構成されている肉体は、食べ物 (五元素)から作られていますので、どんなものを食べるかはもちろん大事ですが、食べた方次第で消化に莫大なエネルギーがかかります。
命を維持する飲食と消化、毎日ハードワークを担う内臓
食べ物は、口から食べて食道を通り、胃から小腸へ、そして大腸から肛門までの長い道のりを経て排泄されます。食道は外径およそ2〜3cmの粘膜の管で、胃まで約40cmあります。食道では消化は行われませんので、数回噛んだだけのパンなどを飲み込んだ時には胸につかえるような感覚が起こり、粘膜の内壁には負担がかかります。胃では胃液とぜん動による消化が行われ、十二指腸での胆汁や膵液(すいえき)などの分泌による消化を経て、小腸では腸液とぜん動によって消化と栄養の吸収が行われ、大腸で水分を吸収し肛門から排泄します。消化が追いつかなくなると、胃では胃酸を過剰に分泌し胃のもたれや痛みとなったり、腸では過剰なぜん動でエネルギーを消耗したり、栄養や水分の吸収不良で下痢や便秘などの排泄異常を起こすなど体の不調を招き、その結果、肌が荒れたり疲れやすくなったりします。
消化をよくするのはどんな食べ方?
そこで、内臓の負担を軽減する重要なポイントは口腔での咀嚼です。よく噛むことで得られるメリットを挙げてみましょう。
1.食べ物が細かく粉砕される
2.消化酵素である唾液(アミラーゼ)が分泌され、食べ物と絡んで胃に届くことで消化を助ける
3.満腹中枢が刺激され、無理なく食べる量を軽減できる
4.脳の海馬が活性され、認知症の予防になる
5.噛む運動でエネルギーが消費され、基礎代謝が上がり太りにくくなる
良いとわかっていても習慣にならないという方は、周囲の人に「よく噛むと体にいいよ」と口に出して言ってみてください。大切な人にも、自分の耳にもよく噛む習慣が少しずつ付いてきます。歯痛などでよく噛むことができない場合は、梅干など酸味のあるものを摂取したり、しばらく口腔に留めて置いたりすると唾液が分泌されます。また、唾液(アミラーゼ)は、別名ジアスターゼといって大根に多く含まれています。ただし消化酵素は熱に弱いので、生のサラダか大根おろしがおすすめです。唾液があまり出ないという方は、試してみてくださいね。
まとめ
「よく噛む」ことで、メリットがたくさんありますね。毎日三食続ければ大きな効果が期待できます。食べ物を水やお茶で流しこむと、せっかく出た唾液が薄まってしまいますので食事中は避けましょう。子どもの頃、「牛乳を30回噛みなさい」と言われて、固形でもないのにと不思議に思ったことがあります。噛む必要のない流動食やヨーグルトなども、唾液の分泌を意識したいものです。最後に、正座と腹八分は日本に伝わる素晴らしい教えです。正座はヨガでは「バジュラアサナ(ダイヤモンドポーズ)」という座位で、ダイヤモンドさえ消化するという効能があります。よく噛んでしっかり消化されれば、また元気な胃腸がしっかりと働き健やかな肉体で過ごすことができます。
<筆者略歴>
中里 えみこ:ヨガインストラクター
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