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倒錯やフェティシズムに満ちたミステリー『メグレと若い女の死』/監督と2人の俳優との三つどもえの戦い『コンペティション』【映画コラム】

倒錯やフェティシズムに満ちたミステリー『メグレと若い女の死』/監督と2人の俳優との三つどもえの戦い『コンペティション』【映画コラム】 画像1

『コンペティション』(3月17日公開)

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 映画に全く興味がない大富豪が、自身のイメージアップを図るため、一流の監督と俳優を起用した映画を製作することを思いつく。

 そして、変わり者の天才監督ローラ(ペネロペ・クルス)と世界的なスターのフェリックス(アントニオ・バンデラス)、老練な舞台俳優イバン(オスカル・マルティネス)が集められ、ベストセラー小説の映画化に挑むことに。

 だが、奇想天外な演出論を振りかざすローラ監督と独自の演技法を貫こうとする兄弟役の2人の俳優は激しくぶつかり合い、リハーサルは思わぬ方向へと展開していく。

 映画撮影前のリハーサルを通して、困った監督と全くタイプの違う2人の俳優との三つどもえの戦いを皮肉たっぷりに描く一種のブラックコメディー。監督はガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン。

 舞台劇を思わせるような3人の丁々発止のやり取りが見どころ。著名なクルスとバンデラスはもとより、これまで知らなかったマルティネスのうまさが目立った。その印象が、映画内のキャラクターと重なるところがあるし、これほどのドタバタの後に完成した映画をあえて映さないところも面白い。

 何より、スペイン映画の持つ独特の明るさやシュールな雰囲気は、アメリカや他のヨーロッパの国の映画とは一味違う感じがした。

(田中雄二)