ハロウィーンで繰り広げられるコスプレは、いまや日本の風物詩となりました。また、JR京葉線の車内では、ディズニーリゾートで購入したキャラクターのカチューシャをつけた人たちがたくさんいます。
そんな私たち日本人は「なりきって楽しむ」ことが得意なのかもしれませんね。そこで旅の提案です。優雅な平安貴族になりきって、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の中核をなす熊野本宮を参拝しませんか。
南紀白浜空港からレンタカーを借り、中辺路に沿った国道311号を使い熊野本宮大社へ向かいます。中辺路とは熊野古道の代表的な参詣道で、和歌山県田辺市から熊野本宮大社を経て、熊野那智大社、熊野速玉大社へと続くルートです。
熊野本宮の近くには、平安衣装をレンタルできるお店が数店舗あります。女性は壺装束(つぼしょうぞく)という衣装に着替えます。ちなみに、男性は直垂(ひたたれ)という衣装が用意されているのですが、圧倒的に女性の利用が多いそうです。スタッフが着付けを手伝ってくれるので、驚くほど短時間で変身完了です。
平安時代の女性の特徴的な装飾として、まずは「市女笠(いちめがさ)」に「むしの垂衣(たれぎぬ)」があります。頭にかぶる笠と、笠のまわりに垂らした薄い布のことですが、これだけで平安の香りが漂ってきます。
さらに「掛守(かけまもり)」を首から下げて、「熊野本宮」と記された「掛帯(かけおび)」を胸にかければ完璧です。参拝中は「一緒に写真を撮ってください」と声を掛けられること必至です。
熊野本宮館というビジターセンターから熊野川方面を眺めると、ひときわ大きな鳥居が見えます。かつての熊野本宮大社があった「大斎原(おおゆのはら)」と呼ばれる場所で、日本で最も大きな鳥居があります。大斎原を平安衣装でゆっくりと参詣する姿は、タイムスリップしたような世界です。
大斎原から熊野本宮館に戻り、次はいよいよ熊野本宮大社です。「浄不浄を問わず、貴賤に関わらず、男女を問わず」と、あらゆる人々を受け入れてきた熊野本宮大社は、はるか千年も続く信仰の聖地です。
熊野を詣でることは生まれ変わることと信じられてきました。あなたも普段の自分を脱ぎ捨てて、熊野本宮から新たな一歩を踏み出しましょう。
【旅人略歴】
エスコートK・・・数十年前、旅程管理主任者の1期生として、国内外のツアーをエスコート。現在は生活情報誌の編集長だが、旅の取材だけは自らのカメラを手に、こっそりとデスクを離れ出掛けている。