2023年9月23日に、西九州新幹線が開通してから1年を迎えます。月に1度お届けしている「幸せになる旅」も、おかげさまで2年目に突入しました。今号は西九州新幹線かもめ号が結ぶ、武雄温泉と長崎市内をエスコートします。
西九州新幹線の開通により、博多から長崎までの所要時間は最速で1時間20分と、これまでより約30分短縮されました。ただし、西九州新幹線「かもめ号」が開通したのは武雄温泉駅から長崎駅までの約66㎞で、博多駅から武雄温泉駅までは在来線の特急列車「リレーかもめ号」を利用します。
西九州新幹線に乗車する前に、まずは佐賀県側の始発駅となる武雄温泉駅周辺を散策しましょう。駅から徒歩で約10分、国重要文化財「武雄温泉楼門」に向かいます。竜宮城のような鮮やかな朱塗りの門で、くぎを1本も使っていない建築物だそうです。東京駅を設計した辰野金吾氏の代表作の一つです。
2012年、復元された東京駅南北ドームの天井には8つの干支のレリーフがあり、武雄温泉楼門には東京駅にはない4つの干支の彫り絵があります。つまり、東京駅南北ドームと武雄温泉楼門を合わせると、十二支がすべてそろうのです。すべての干支を見つけたら、幸せな気持ちになるかもしれませんね。
2004年から始まった「九州駅弁グランプリ」で、3連覇の偉業を達成したお店が武雄温泉駅構内にあります。改札を出て、観光案内所に併設されたカイロ堂です。「厳選黒毛和牛 佐賀牛 すき焼き弁当」は第8・9回大会で連覇、「厳選黒毛和牛 佐賀牛 極上カルビ焼肉弁当」は第10回大会でグランプリを受賞しました。
自家製ダレをまとった極上のカルビからは、かむたびに肉のうまみがあふれ出ました。もはや駅弁のレベルとは思えません。改札を一旦出る必要がありますが、途中下車するだけの価値がある駅弁です。
さあ、いよいよ西九州新幹線に乗車します。武雄温泉駅のホームには、博多駅から到着した在来線の「リレー特急かもめ」と、長崎駅へ向かう西九州新幹線「かもめ」が並んで停車しています。向かいに停車している列車への乗り換えですから、さほど手間はかかりませんね。
「かもめ」の指定席は2×2列シートなので、まるでグリーン車のようにくつろげます。嬉野温泉、新大村、諫早と停車して長崎に到着。わずか30分程度の新幹線旅です。
終着駅のホームの端に立つことが趣味の私は、真新しい長崎駅のホーム先端まで歩いてみました。途切れた線路の先からは長崎港が見える開放的な構造でした。
長崎駅からは定番の観光コースに向かいます。世界遺産の構成資産に認定されたグラバー邸(グラバー園)や、徳川幕府が造った人工島の出島を散策。長崎新地中華街で名物の角煮まんじゅうを購入して、めがね橋などが架かる中島川付近で食べ歩く。何度訪れても、やっぱり長崎は楽しい。
【旅人略歴】エスコートK…数十年前、旅程管理主任者の1期生として、国内外のツアーをエスコート。現在は生活情報誌の編集長だが、旅の取材だけは自らのカメラを手に、こっそりとデスクを離れ出掛けている。