昨年末に子どもと一緒に、映画『はたらく細胞』を見に行きました。平日でしたが、夕方の回で、ほぼ満席でした。映画を見に行く時、満席だと、どうしてもテンションが上がってしまいます。空いていた方が、席も選び放題だし、前の人の頭で見えにくいなどといったリスクも低いにも関わらず、「満席=人気のある映画」を見に行っている満足感と、流行を追えている感が、勝ってしまう。普段はほぼミーハーじゃないのにも関わらず、唯一出てくる私の中のミーハー。
映画の内容も、体の内外で巻き起こるストーリーにぐいぐい引き込まれ、あっという間の110分でした。原作の漫画も、アニメも、ほぼ見たことがなかったのですが、遠い昔に勉強した生物の授業を思い出したり(ヘルパーT細胞の存在を知った時は、なんてすごい細胞が自分の体の中にいるんだ!と興奮したなぁ)、目下、勉強している予防医学の知識を、脳内で照らし合わせたりして、いろんな意味で面白く鑑賞することができました。7歳の娘は、途中の細胞同士の闘いで怖くなってしまったらしく、目をつむってしまっていましたが、最終的には「楽しかった!」と上機嫌で、映画館を後にしました。
その翌々日のこと、午前中から、やや元気がなかった娘が、気持ち悪いと寝込んでしまいました。微熱ではあるものの、この時期のこの症状は、恐らく胃腸炎かインフルエンザと判断し、早々にマスクを装着して、看病体制に入りました。一晩様子を見て、病院へ行こうと思っていたら、娘が青い顔をしながら「おうどんたべる」「みかんたべる」と、これまでの病気の時にはなかった、頑張って栄養を取るという姿勢を見せてきました。
もしやと思って訊(たず)ねると、やはり「たたかうさいぼうをおうえんするため、たべようとおもった」とのこと。映画をみて楽しいということだけでなく、思わぬ効果ももたらしてくれました。
ちなみに、食べてぐっすり寝た彼女は、翌朝「お腹すいたー!」という声とともに目覚め、胃腸炎もインフルエンザも、私の杞憂(きゆう)に終わるという、ありがたい結果に終わりました。もしかしたら、体内のイメージを持てた娘の免疫力が、上がったのではないかと、ひそかに思った年の瀬の朝。
この冬の親子での映画鑑賞に、おすすめしたい作品です。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 3からの転載】
平井理央(ひらい・りお)/1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。