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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】一瞬のオリオン座

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】一瞬のオリオン座

2026年10月26日=2769
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


▽見えなかった

 何が見れへんかったって・・・それは流れ星。
 10月下旬、オリオン座流星群がやってくることをある記事で知った。10月21日深夜から22日未明(午前3時ごろ)にかけてピークを迎える。つまりそのときが見どころで1時間に10個ほど流星が見えるという。すると30分も見続ければ、5個は拝める計算だ。よ~しと気合が入った。

 ところが少し訳あって、22日深夜はじっくり観察する時間が取れず、翌23日の決行とした。1日ずれたって見え方はそう変わらないとの素人判断した。しかし23日に目覚めたのは、未明といえるかどうか微妙な午前4時半過ぎ。すっかり出遅れてしまった。

▽寒さは天敵

 めげずに外に出た。わが地元三重県とはいえ、10月となれば朝は冷える。特にがん治療中の患者にとって寒さは天敵だ。完全冬防備服で立ち向かった。時は4時40分を迎えていた。

 「えっ…」

 ここでも難敵が待ち構える。何と星が見えない。空を見上げても星自体が全く見えへんです。どうやら雲が覆っているようだ。流れるどころの話や、ない。そうは言うてもこっちかて、真冬仕込みの格好で見上げている。今のところ寒さも感じてない。引き下がるなんてとんでもない、このまま居続けようと腹をくくった。

 しばらくして雲の合間に段々と光が浮かび上がってきた。もちろん数は少ない。ひとつふたつ、両手までくらいか。見えたのは雲が晴れたからではない。暗い環境に入った際、時間経過とともに目が慣れてきて徐々に周りが見えてくるようになる、いわゆる「暗順応」のおかげだ。夜空を眺め始めて10分ほど経っていた。でもやっぱり流れ星は現れない。「オリオン座流星群」なのに、主役であるオリオン座すら見えない。

▽雲のすき間から

 さらに10分ほど過ぎた頃、南の空にあるものが出現してくれた。斜め一列に連なった三ツ星とそれらを中心として周りを四角く囲む四つの星。そう、オリオン座が視界に飛び込んできた。それも雲のすき間から。

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】一瞬のオリオン座

 晴れた夜空ならば当たり前に見える姿だろうが、今日は違う。オリオン座全体が見えているのではない。三つ並んだ中央、さらに周りの四つ。そこだけ雲がない。言うならばその5カ所に合わせるかごとく雲が消えている。それも一瞬だ。言葉を失った、大満足。もう流れてなくてもええ。

▽次にも期待

 がんを患い、手術そして抗がん剤と頑張ったにもかかわらず、転移が出現した。日々を生きる中で、目指す目標のハードルは随分と下げている。風光明媚の名だたる観光地でなくても、近所の田園風景で満喫できる。胃がほぼ全摘出されているため一人前は食べられなくても、ゆで卵ひとつで充分だ。

 そんな己にほんのひととき眼前に登場してくれたオリオン座、感無量だ。ホントにありがとお~。そうは言うても欲深な己。次なる流星群に期待したい想いもある。生きてる限り、夜空を見上げるぞ!

 その日は計60分近く粘ったけれど、流れ星は結局ひとつも見れへんかった。一緒に持参していた置時計は、気温12.9度を示していた。

 ところで昨年10月にわが書を出版すること叶いました。「がんになった緩和ケア医が、本気でホスピスを考えてみた」(双葉社より、税込み1650円)もしも関心をお持ちくださったならば手に取っていただけますと甚だ幸いでございます。またユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、気ぃ向かれましたならばお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。応援してもらえると生きる力になります。引き続きご贔屓のほど何卒よろしくお願い申し上げまぁす!!

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、20年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、21年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、22年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)、25年「がんになった緩和ケア医が、本気でホスピスを考えてみた」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。