2025年3月31日=2,185
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算

2025年2月の昼下がり、ひとつのイベントに参加した。「緩和ケア」をテーマに3人の関係者が司会者を交えて語り合う。3人の内訳は、現場で緩和ケアを実践する看護師、緩和ケア専門医師、そして現役のがん患者だった。当日の私の役回りは、そう「がん患者枠」である。「がん患者そして医者どちらも現役、三重県の二刀流こと大〇〇平」なんて、自己紹介すること多々ある身だが、この度は「現役がん患者」としての出席だった。
▽生きていたから会えた
会場は東京都内のとある水辺の建物。オンライン配信なので現地に視聴者は居らず、われわれ3人と司会者が一堂に会した。当日を迎えるにあたり何週間も前から私はワクワクしていた。なぜならば60年あまり生きてきて初めて訪ねる土地、さらにほとんどが初対面の方たちだからだ。
2018年6月のがん発病から、いま6年になる。胃のほぼ全摘手術による後遺症や抗がん剤の副作用など、決して楽とは言えぬがん治療を、自分なりに続けてきた。だから生きていられる。生きているからこその出会いだ。大感激である。
ではカルテットで奏でた当日のイベントの内容は皆さんも気になるところでしょうが、これは別の機会にお話しするとして、今回は後日談だ。
▽全国に生存報告?!
このイベントの様子は後日、新聞に記事掲載される予定だと約束されて、私は地元三重に戻った。全国紙だ。
「掲載日が決まったら大橋さん、連絡します」
記者のうれしい声がけから、遠くに住む仲間が読んでくれるかも、なんて妄想がおのずと広がっていた。
ところがいっこうに記者からは音沙汰がない。1週間そして半月過ぎても。患者風吹かせた(【編注】「先輩風を吹かす」をもじった大橋先生独自の用語)発言が尾を引き、患者枠の登場が消滅したのか。詳細は控えるがマイ発言に悔いなしと言えばウソになる。その対象は一つ二つにとどまらない。
というわけで、諦めた。仲間に対する自らの生存確認に公の媒体を使うなど不届きだ、と天罰が下されたと観念した。
「来るものウエルカム、来ないもの求めず」
▽いよいよ掲載
ちょうど1カ月が経とうとした時、記者から連絡が入る。「〇月〇日掲載予定」と。ただし予定がずれる場合もあります、と付け加えられた。
さらに2週間ほど、待ちに待った。わたくしども諸事情から新聞の定期購読をやめている。読みたいときはコンビニで買う。紙媒体大好き昭和世代のわが家では苦渋の決断だった。ようやく待ちわびた日を迎えた。普段よりも早起きした。
「わたしが買いに行ってくる、あなたは家で待っとって」
力強い言葉だ、これぞ専属秘書。程なくして戻ってきた。
「何よりも先ずあなたに見てもらいたくて、まだ開けてないよ」
心配りもすばらしい。彼女の手は複数部を抱えている。1部だけやない。これで何軒もの親戚連にも届けられる。高鳴る胸を抑えながら新聞を開く。

▽載ってない
1面から順に、ではなく1面を見たあとは後ろの番組欄を見て、そこからページをさかのぼる習慣だ。本日分は30面少々ある。20面、10面と進むが関係記事が、まだ見当たらない。そして最後をめくる・・・な、なんと、載ってない!
見落としたか。今度は逆行ではなく、1面、2面と順に進める。結果は同じだった。
ここで予定日がずれるかも、という記者の言葉を思い出し、翌日も試みた。ただし1紙180円も安くないから地元図書館で確認する。が、やっぱり掲載されてない!!
▽想像だけで満足
その後、とある筋から今回は「東京版のみの掲載」と知った。だから三重県在住の自分には分からなかったのか。己の目で掲載を確認できなかったが、
「誰か一人が読んでくれたかもと想像するだけで大満足」
担当記者さん、○○新聞さん、ホントに本当にありがとお~。もしも次なる機会を頂戴できるなら、ぜひぜひ!!!
わがユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。
応援してもらえると生きる力になります。引き続きごひいきのほどなにとぞよろしくお願い申し上げまぁす。
【編注】これとは別に大橋先生の投書が3月21日付の朝日新聞「声」欄に掲載されています
(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)
おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。
このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。