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新納慎也、大河ドラマに続いて三谷幸喜作品に出演「三谷さんは“お葬式で笑い出してしまう人”」【インタビュー】

 数々のミュージカルやストレートプレーに出演し、舞台俳優として活躍するだけでなく、テレビドラマや映画でも存在感を示している新納慎也。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では阿野全成役を演じ、全成の登場が最後となる放送回後には「全成ロス現象」を巻き起こすなど、大きな反響を集めた。11月7日からは、「鎌倉殿の13人」の脚本を担当していた三谷幸喜が作・演出を務める舞台「ショウ・マスト・ゴー・オン」に出演する。本作は、三谷が主宰する劇団「東京サンシャインボーイズ」が、1991年に初演したコメディーを、三谷自らリニューアルして上演。“小道具づくりのレジェンド”役を演じる新納に、三谷作品への思いや公演への意気込みなどを聞いた。

新納慎也 (撮影:加藤孝/ヘアメーク:田中エミ(Rapport81)/スタイリスト:津野真吾(impiger))

-三谷作品には「鎌倉殿の13人」に続いての出演となりますが、三谷作品の魅力をどこに感じていますか。

 以前は、キャラクターのさまざまな事情が折り重なっていくシチュエーションコメディーの面白さが好きでしたが、三谷さんも年々、作品の色が変わってきて、進化していらっしゃるので、なかなかここと断言するのは難しいですね。だって、「鎌倉殿」はシチュエーションコメディーからは程遠い、おぞましい展開が続いているでしょう? でも、癖になる面白さがあって、人の闇や黒い部分をこれでもかと見せつけているのに、引きつけられてしまうんです。しかも、そうしたある意味、怖い話の中にも笑いの要素があって、その笑いがすごく上質で面白いんですよ。三谷さんの笑いは、一発芸のようなものではなく、その状況が面白いという笑いが多い。三谷さんはよく「笑わそうとしないでください。とにかく、みんなが本気で、リアルな演技をしてください」とおっしゃいますが、そうして作られる笑いも僕は三谷作品の好きなところです。

-本作では“小道具作りのレジェンド”を演じます。どんなキャラクターですか。

 伝説の小道具作りの名人、七右衛門という役なのですが、ネタバレになってしまうので、それ以上は言えません(笑)。実は僕、明日(取材翌日)の稽古で初めての登場シーンをやる予定なんですよ。ですが、僕が登場する以前のシーンで「七右衛門が来てくれる」、「七右衛門なら何とかしてくれるぞ!」と、さまざまなキャラクターたちが言っていて、期待を持たせているので、どうやって登場したらいいのか、今、思い悩んでいます(笑)。プレッシャーで胃が痛いです。

-三谷さんから何かアドバイスはありましたか。

 この作品の主役は、鈴木京香さんが演じる舞台監督の役なのですが、読み合わせのときに、三谷さんが「小道具作りの七右衛門という役がこの作品の真の主役と思ってください」と言い出したんです。僕も含めて、そこにいた全員が「えー! そんなばかな」って言いました(笑)。決して、そんな役柄ではないんですよ。それ(三谷の言葉は)は、僕へのいじりみたいなものですから。今日も、三谷さんが「明日は、いよいよ七右衛門が登場します。皆さん、ご期待ください!」と言って、稽古を終えたので…プレッシャーをかけられ続けています(笑)。

-新納さんから見た、三谷さんはどんな人ですか。

 「お葬式で笑い出してしまう人」です(笑)。これに尽きます。きっと、今の状況でこんなことが起こったら面白いなとか、この人がこういうことやったら面白いなということを、普段から考えていて、それがちょこちょこ作品に反映されているように思います。怒られているのに笑ってしまったり、絶対に笑ってはいけない場所で笑ってしまう子ども、いませんでしたか? そんな子どもがそのままおじさんになったのが三谷さんなのかなと思います。

-本作のタイトル「ショウ・マスト・ゴー・オン」とは、「ショーは一度始めたら、何があっても最後までやり遂げなければならない」という意味です。新納さんがこの言葉を強く感じたエピソードを教えてください。

 この言葉は、僕ら演劇界では昔からたたき込まれている言葉です。例えば、東日本大震災のときも電力の問題などがあり、「舞台を上演することは不謹慎なんじゃないか」という声もありましたが、一方で、「今こそエンターテインメントで日本を元気づけなきゃいけないんだ」という思いを持って舞台はすぐに再開しました。そのときは、僕たちもこの言葉に鼓舞され、舞台に立つ勇気を持てました。ですが、このコロナ禍においては、とても難しいなと感じてきました。人を集めてはいけない状況で、「舞台は不要不急だ」と言われたら、「こんなときこそ」とはとても言えなかったです。僕たちが舞台をやることで、死んでしまう人がいるかもしれないという現実を叩きつけられたわけですから。なので、少しずつ再開したときも、僕は恐る恐るというのが正直な気持ちでした。今は、当時に比べれば状況は良くなってきていますが、何も考えずにできるとは思っていません。とにかく、できる限りのことをして、お客さまをお迎えするしかないなと思います。

-では、改めて、本作の見どころをお願いします。

 今、稽古をしていても本当に毎日大笑いしているので、とにかく笑える作品であることは間違いないと思います。次から次へとさまざまな人物が出てきて、しかもその出演者が、皆さんとにかく豪華。他の舞台ならばもっとたくさん出番があるような方々が、ほんの一瞬しか出なかったりするんですよ。だから、すごくぜいたくな舞台になっていると思います。しかも、その一瞬の出演シーンに皆さんが全精力を傾けて登場するので、まばたきもできない作品になると思います。

(取材・文/嶋田真己)

新納慎也 (撮影:加藤孝/ヘアメーク:田中エミ(Rapport81)/スタイリスト:津野真吾(impiger))

 舞台「ショウ・マスト・ゴー・オン」は、11月7日~13日に福岡・キャナルシティ劇場、11月17日~20日に京都劇場、11月25日~12月27日に都内・世田谷パブリックシアターで上演。
公式サイト https://www.siscompany.com/showmust/