エンタメ

松本若菜「ただただ、1人の女性を生きたいという思い」“松本劇場”から一転、心優しき骨髄移植のドナー役『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』【インタビュー】

-その真っすぐな芝居が、かえって新鮮な印象でした。ところで、企画・原案・主演を担当した樋口さんの本作に懸ける思いについては、どう受け止めましたか。

 初めてお会いしたときから、ずっと感情が高ぶっているんです。「この映画を作りたい」という悲願が実現するということもあるんでしょうけど、「今日があるのも、ドナーの方のおかげ」という感じで、全てに対して感謝している方で。実際に生死の境をさまよう経験をしたからこそ、そういう気持ちを人一倍強く持っていらっしゃるのかなと。現場でも本番中なのに、モニターを見ながらおえつする樋口さんの声が聞こえてきたりして…。やっぱり想像するんでしょうね。自分のドナーの方が、もしかしたらこんな思いをしていたのかもって。それを見て、胸がいっぱいになりました。

-この作品を経験して、骨髄バンクやドナー登録に対する思いに変化はありましたか。

 この物語には、樋口さんの気持ちが強く反映されていて、樋口さんも会うことができないドナーの方に対する感謝や、骨髄提供を受けて元気になった人たちの気持ちを代弁するような映画です。でも、現実にはうまくいかず、助からなかった命もたくさんあるはずなんですよね。だから、そういう人たちや家族の方々の思いもしっかりと刻み込んで、伝えていかないといけないのかなと。伝え方がすごく難しいんですけど、そういう気持ちは忘れずに持ち続けていたいと思っています。

-松本さんご自身、こういった社会貢献についてはどう考えていますか。

 以前、『ケアニン~こころに咲く花~』(20)という高齢者介護を題材にした映画に出演したことがあるんですけど、それも「介護職のマイナスイメージを払拭したい」という思いで製作された作品でした。実際にご覧になった方から、「これを見て、介護の試験頑張ってきます」という言葉を頂くと、後押しになったのかなと思いますし、こういう作品は各地でロングラン上映されるので、そのたびに「知らなかった」「もう一回見たい」というお話を聞くことも多いんです。そういう意味で、表現を通していろんなことを想像してもらう職業の私たちにとっては、それが社会貢献の一つになっていると信じたいんですよね。

-私自身も骨髄バンクにドナー登録していますが、この映画で初めて知ることがたくさんありました。そんなふうに社会的に意義のあることを広く知ってもらえるのも、映画の価値の一つですね。

 そう信じたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2022「みんな生きている 二つ目の誕生日」製作プロジェクト