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教育研究フェス「Tokyo Education Show」を開催 「教育は楽しい!かっこいい!」約3千人が体験 秋空の下、東京学芸大学で

教育サミット後、記念撮影に応じるパネリストたち

 子どもから大人まですべての人が「教育は楽しい!かっこいい!」と感じられる機会を提供することを目標に、教育の魅力を体験できる教育研究フェス「Tokyo Education Show」(TES、実行委員長・田﨑智憲さん、学生代表・髙橋鈴さん)が、秋空の快晴の下、10月12日(土)、13日(日)に国立大学法人東京学芸大学小金井キャンパス(東京都小金井市)で開かれた。

 今年は昨年に続く2回目の開催で、子ども連れの親子ら、2日間で延べ2933人(オンライン参加者含む)の来場があった。主催は特定非営利活動法人「教育の環」(東京)で、全国から集った教育を志す高校生・大学生が中心となり運営している。

 イベントは「あたらしい公開研究会」(全国の魅力的な教員・教育クリエーターによる授業)、「教育サミット」(教育業界のステークホルダーが一堂に会するトークセッション)、「教育若者会議」(未来の教育を変えていくための若者主体の企画・交流会)などをメインカテゴリーに、多様なプログラムを2日間にわたって展開した。

 サイエンスアーティストの市川元気さんらを迎えた「サイエンスライブ 世界一楽しい科学の授業」では、参加した子どもたちの大きな歓声が上がり、会場は熱気を帯びていた。一方、教育サミット「これからの教員養成のあるべき姿」は、東京学芸大学の理事・副学長、文部科学省の教育人材政策課長をはじめとした専門家、TES学生代表ら計5人のパネリストが熱心に議論し、聴衆は聞き入っていた。

進行役を務めた田﨑さん(右から2人目)、学生代表の髙橋さん(右端)
 

 ▽「魅力がポジティブに伝わる仕組み必要」

 トークイベントの冒頭、進行役を務めるTES実行委員長の田﨑さんが「昨今の教育・教職の魅力低下という言説」を紹介。具体的には、教育現場の「ブラックな現場の報道」が増えていることや、「教員採用試験の倍率」の低下、「教育学部の進学者数」の減少などについて、説明した。

 これらの言説に対し、田﨑さんは「教育・教職の実際と魅力がポジティブに伝わる仕組みが必要ではないか」と指摘。その仕組みの一つとして、今回のTESのようなイベントを通じ、教育の魅力を発信していき、「イベントにかかわる全員が『教育をもっと魅力的にしたい』という目的に向かって、教育の魅力を創造していく主役だ」と強調した。

 続いて、学生代表の髙橋さんが、他の学生たちと「教育若者キャンプ」を開催したことを報告。東京学芸大2年の髙橋さんは昨年の「TES2023」のスタッフに加わり、本年度は学生代表に就いた。「もっと日本の教育を見に行きたい」と教育若者キャンプを立ち上げた。全国3カ所(北海道、東京都、熊本県)の学校に赴き、授業見学や先生、児童との対話を、現地に宿泊しながら実施した。

 髙橋さんは熊本県天草市の小中学校でのキャンプに参加し「自分たちが知っている教育の姿と実際の現場の姿にとてもギャップがあることを痛感した。自分がこれまで見たことのないような授業スタイルだった。自分が(そのような授業を)できるようにするためには、何をしなければいけないのか、真剣に考えるきっかけになった」と振り返り、このキャンプが「もっと学びたい」と思うスタート地点になったと話した。

 次に、東京学芸大学の理事・副学長の佐々木幸寿さんが「教員養成において解決すべき課題」と題してスピーチした。佐々木副学長は、教員養成が抱える課題として、「教育学教育(学問的教育)と教員養成(実践的指導力)をどのように統合するのか」など計4点を指摘した。「大学は課題解決に向けた素材を提供するに過ぎず、学生自身が自己形成の中で深化発展させるものだ」とした上で「課題解決は本来、学生が自律性をもって担うことでこそ実現するのではないか」と結論づけた。自律性という観点から、先ほどの髙橋さんらの「教育若者キャンプ」の取り組みについて評価した。

グラフを示しながら説明する文科省の後藤課長(左)
 

 ▽教育を取り巻く多様なステークホルダー

 2014年に最年少の民間人校長として箕面高校(大阪府)に着任するなどの経験を持つ、一般財団法人活育財団共同代表の日野田直彦さんは日本の学校に足りないものとして、「オーナーシップ」「対話と哲学」「心理的安全性」の三つを挙げた。日野田さんは自身の経験を踏まえ「先生という仕事は、基本的に黒子だと思う。あくまで生徒が主人公で、僕たち教員は踏み台のような存在ではないか」と強調した。

 最後に、文科省の後藤教至・教育人材政策課長が「未来の教師を目指す皆さんへ」と題して話した。後藤課長は、学校教育には数多くのステークホルダーが存在することを説明した。「他の分野ではあまり見られず、多種多様なステークホルダーから多くの意見が出やすい」という特徴があるとした。

 一方で、多様な意見はかみ合わないこともあり、その要因が、教育改革は少なくとも20年以上先を見据えて取り組まなければいけないのに、「現在の教育に携わる人たちは、現在の価値観を基準に考えている。さらに、親の世代は自分が受けた20年以上前の教育を基準に考えている」と、自分の意見をまとめる際の時間軸の相違を強調した。

 そのような現状で、目指すべき教師の姿として「変化を前向きに受け止め、教職を生涯通じて学び続ける」ことだと指摘。その上で「学び続けていくためには、学生時代に自分の心に火をつけておくことが一番大事で、先ほどの髙橋さんらの『教育若者キャンプ』の話はとてもよい取り組みだ」と力を込めた。

 イベントの最後に、田﨑さんは「教員の両親に憧れ、私は教員の道を志しました。今日、いろいろとお話を聞いて、教育の魅力についてもっともっと発信していける部分が、たくさんあるのではないか」と締めくくった。

「サイエンスライブ 世界一楽しい科学の授業」を受ける子どもたち
 
構内に出店したキッチンカーでランチを購入する来場者
 

特定非営利活動法人「教育の環」
 “教育ですべての子どもたちに笑顔の瞬間を”をコンセプトに、さまざまな教育企画・プロモーション・プログラム開発を行う教育クリエーター集団。日本全国の教員、教育YouTuber、サイエンスアーティスト、学生・生徒、プロデューサー、大学教授、お笑い教師芸人、研究員、音楽家など、教育に関わる多様な人々で活動を展開している。