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食への喜びあふれる力作そろう 弁当の日・作文コンクール表彰式

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 弁当作りなど料理体験の思い出を写真や絵を添えた作文で表現する小中学生対象のコンテスト「弁当の日おいしい記憶のエピソード」(株式会社共同通信社主催、全国小学校家庭科教育研究会、全日本中学校技術・家庭科研究会共催)の表彰式が3月25日、東京都内で開かれ、最優秀の「文部科学大臣賞」を受賞した新潟県三条市立第四中2年の矢坂晟太郎(やさか・じょうたろう)さんらに賞状が贈られた。

 5回目を迎える今回は全国から2704点の応募があり、個人18人、学校2校が受賞した。表彰式には、特別賞(11人)を除く個人受賞者7人のほか、受賞校2校のうち1校の代表者が出席。審査員を務めた「弁当の日」提唱者の竹下和男氏やキッコーマン執行役員の大津山厚氏、全日本中学校技術・家庭科研究会副会長の矢島加都美氏らから、賞状や副賞を贈られ、それぞれ受賞の喜びを語った。

「文部科学大臣賞」に輝いた矢坂晟太郎さん(中央)=東京都港区、2023年3月25日
「文部科学大臣賞」に輝いた矢坂晟太郎さん(中央)=東京都港区、2023年3月25日

 「文部科学大臣賞」に輝いた矢坂晟太郎さんの作文「特別なお弁当」は、卵と小麦を口にするとアレルギー症状が出る矢坂さんが幼稚園時代に食べた、卵・小麦抜きの母親手作りのお弁当を自身で再現した体験をつづる。小麦を含むしょうゆは塩みそなどで代用、揚げ物の衣は片栗粉を使うなどさまざまな母の工夫を追体験し、「誤食をすれば命に関わる事故となるため、間違いが決してないように」「懸命に僕を育ててくれた母の気持ちが伝わってきた」と母親への感謝を述べている。

 矢坂さんは受賞のあいさつで「食物アレルギーの僕のために特別なお弁当を作ってくれた母親、学校給食でアレルギーに対応してくれている調理員や先生への感謝の気持ちが今回の受賞で強まった」と話した。

 「キッコーマン賞小学生の部」を受賞した鹿児島県与論町立与論小3年、清藤碧依(きよふじ・あおい)さんの作文「おうえんべん当」は、父親のために作ったお弁当が「空っぽのお弁当箱」になって戻ってきた時の喜びを語る。「お父さんありがとうと思って、食べてくれた気持ちが伝ってきました。誰かにお弁当を作るのは大変だけど、相手のことを考えたり、喜ばせたりすることがとても楽しいので、また来年も作りたい」と空っぽのお弁当箱を見て感じた素直な気持ちをつづった。「ファイト」などの応援メッセージを書いた紙の小旗をおかずに立てたお弁当の写真も添えた。
 清藤さんは「受賞はびっくり。とてもうれしい」とあいさつした。

 「キッコーマン賞中学生の部」に選ばれた東京都の晃華学園中3年、大橋美月(おおはし・みづき)さんの作文「お弁当の力」は、いつも学校に持っていく母親手作りのお弁当の話。母親が毎朝4時台に起きて弁当を作っていることも知らずに、ある朝寝坊して弁当作りが遅れた母親に当時中学1年の大橋さんは「学校遅れちゃうから早くしてくれない」と言ってしまった。この自己の行いを反省し、母親に謝るため4時に起きて母親のためにお弁当を作った。料理は不得手で作った卵焼きは焦げ、見た目は最悪。そんな弁当でも、大橋さんが「ごめんね」を言って差し出したお弁当を「お母さんは驚いた顔をし、おいしくもないはずのお弁当を泣きながら食べ『おいしいよ、ありがとう』と言ってくれた」。母親の娘を思う気持ちに触れた大橋さんの喜びが行間からこぼれている。
 大橋さんは「作文を通じて、親が毎日お弁当を作ってくれることが当たり前ではないことにあらためて気付かされた」と話した。

 「日清オイリオ賞」に選出された山形県村山市立葉山中3年の元木月(もとき・るな)さんの作文「お弁当の力」は、自身初めてのお弁当作りに苦戦する中で初めて気付いた、人を元気にする不思議なお弁当の力やお弁当を毎日作ってくれる母への憧れを語る。元木さんは、お弁当は食べる人を「食べただけで不思議と元気」にし、作る人を「『おいしかったよ』の一言で救われる」存在にする力があると指摘。自身初のお弁当作りを通じて、不思議な力のあるお弁当を「日々、忙しい中で家族の健康と栄養とバランスを考えて」作る母は「憧れの存在になった」と心境の変化を書いている。
 賞状に手にした元木さんは笑顔で「うれしい」と受賞の喜びを述べた。

 「共同通信社賞」に輝いた札幌市立平岸高台小4年の藤井雄大(ふじい・ゆうだい)さんの作文「ぼくは卵焼き職人」は、母が作るお弁当の卵焼きを毎回残す幼稚園児の妹のために、ユーチューブの動画を見て巻き方を学び、砂糖をたくさん入れて甘い卵焼きを作った体験記。“小さな卵焼き職人”となった藤井さん自慢の甘い卵焼きを妹は気に入り、卒園するまでその卵焼きを「残さず食べた」。初めて作った日、母親が作ったと思って「ママ、今日の卵焼き甘くてすごくおいしかった」という妹に、藤井さんは「僕が焼いたんだよ」と言う。妹の喜ぶ顔と「エッヘン」とも言いたげな藤井さんの誇らしげな表情が共に浮かぶほほ笑ましい場面だ。
 藤井さんは受賞あいさつで「今度はから揚げに挑戦したい」と次の目標を宣言した。

 「全国小学校家庭科教育研究会賞」を受賞した沖縄県伊江村立伊江小6年の平田知友楽(ひらた・ちゅら)さんの作文「弁当の日をきっかけに」は、母親に手伝ってもらいながら「緑、黄、赤、紫と、色とりどりの見てもおいしい弁当」を作った体験を述べる。平田さんはお弁当を実際作ってみて料理をする大変さを実感。「掃除や洗濯、ご飯を作ったり、その後片付け」をする「平日は座る暇もない」母親の姿をあらためて思い出し、日ごろ口うるさい母の言葉に「反抗している自分が、情けなくなりました」と反省する。読み進むに連れて、平田さんのぐんぐん成長する姿がくっきりと浮かび上がってくる。

 「全日本中学校技術・家庭科研究会賞」を受賞した福岡県志免町立志免中1年の稲永こはる(いねなが・こはる)さんの作文「マスキングテープとお弁当」は、稲永さんが父親のために作ったお弁当のふたに貼ったメッセージ付きの「マスキングテープ」が“主人公”。稲永さんが書いたメッセージは「お父さんへ。お仕事いつもお疲れ様!!お弁当食べてね」。父親は娘の弁当を会社で食べ、弁当箱を家に持ち帰ったが、ふたに貼ったはずのマスキングテープはなかった。「(父親が見る前にどこかで)剥がれたのかもしれない」とその時は残念な気持ちがしたが、数年後、父親の勤務先を訪ねた際、父親の机に貼り付けられたマスキングテープを見つけた。稲永さんは「それほど喜んでもらえたんだ」とその時の心境をつづり、「初めての手作り弁当の思い出は、私の宝物」と締めくくった。
 稲永さんは「初めて作ったお弁当は自分の宝物になったが、今回の受賞は新しい思い出を新たに作ってくれた」と語った。

 「学校賞中学校の部」を受賞した山口県岩国市立玖珂中は、子どもたちが持参した自作弁当を学校で一緒に食べる「弁当の日」の取り組みを10年間続けている。同校養護教諭の藤島愛子さんは「弁当の日は学校の恒例行事になった。家族の会話のきっかけにもなる。これからも弁当の日の取り組みを続けていきたい」とあいさつした。

 表彰式冒頭にあいさつした審査員の大津山厚氏は「おいしいものを食べている時に、けんかをするのは至難の業。食は人と人をつなげる力がある。これからもお弁当作りを続けてください」と食を通じた共感力の大切さを強調した。

 審査員の竹下和男氏は講評コメントで「多様な応募作品に包まれて、審査員の間でも“こんな幸せな場面が子どもたちの行動から生まれるのだ”と感動していた」と応募した子どもたちへの感謝の気持ちを述べた。

 「特別賞」は次の皆さん。

 【特別賞小学生の部】「ぼくのとくせいコロッケをごちそうしよう」千葉直大朗(宮城県、気仙沼市立唐桑小3年)▽「ちゃあちゃんのためのバースデイ弁当」林誠ノ亮(東京都、成城学園初等学校2年)▽「人生初!のりまき弁当」舘沼由人(東京都、江戸川区立平井西小5年)▽「お弁当の日」早水天門(奈良県、田原本町立南小6年)▽「弟のために時間をかけて作ったりにゅう食」宮﨑柚茉(香川県、綾川町立滝宮小4年)

 【特別賞中学生の部】「食と人とのつながり」鈴木万葉(秋田県、大仙市立仙北中3年)▽「おじいちゃんの味」鎌田彩姫(茨城県、江戸川学園取手中2年)▽「タチウオの料理」大木新(東京都、東京農業大学第一高等学校中等部3年)▽「魔法の宝石箱」栗田夏帆(東京都、町田市立真光寺中1年)▽「お姉ちゃんの野菜炒め」松田蓮那(沖縄県、浦添市立浦添中2年)▽「鶏からのクリスマスプレゼント」林圭太(沖縄県、竹富町立鳩間中2年)

 「学校賞」は次の2校。

 【学校賞小学校の部】鹿児島県枕崎市立枕崎小学校

 【学校賞中学校の部】山口県岩国市立玖珂中学校