セーヌ川の向こうにそびえるエッフェル塔。観光なら写真に収めたい美観だが、泳ぐとなると「美しい」とはいえないセーヌ川の水質が問題になっている。来年夏に開催されるパリ五輪で、長距離水泳の競技、「オープンウォータースイミング」の会場になる予定のセーヌ川でのテスト大会が、水質が基準を下回ったことを理由に中止になった。
パリジャン紙などの地元メディアによると、中止の決断は大会当日8月6日の朝4時。直前までパリ市などが協議していたが、「選手たちの健康を優先せざるを得ない」と決断に至った。この時期の雨としては20年ぶりともいわれた大雨が続いた影響で、下水管があふれて汚水が川に流れ込み、エスケリキアと呼ばれる細菌が限界値を超え、水質が水泳できる基準を下回ったという。
20世紀初頭は市民が泳いでいたというセーヌ川は、20世紀後半にかけてどんどん水質が悪化。再び泳げるセーヌを取り戻すため、浄水場や貯水槽の工事が進められている。