TABIZINE編集部員が、取材先やプライベートで気になった小ネタをお届けする編集部ブログ。今回は、京都・奥嵐山に佇む“水辺の私邸”「星のや京都」で体験した香りを聞く「聞香(もんこう)」について紹介します。室町時代に始まったとされる聞香という遊び……奥が深すぎです!
香りを聞く「聞香」とは?
TABIZINE編集部の井上です。“夢中になるという休息”をコンセプトに、圧倒的非日常を提供するブランド「星のや」の一つ、「星のや京都」に先日宿泊してきました。奥嵐山にある、舟でしか行けない宿。そして、趣たっぷりの日本建築や意匠がとても素敵なんです。
そんな星のや京都で、香りを聞く「聞香(もんこう)」体験をしてきました(1名 3,388円/税・サービス料10%込)。聞香とは何ぞや? 何をするの? という人もいるかもしれません。
聞香とは、元々は室町時代に始まったとされる遊びです。高価な香木の香りを「六国五味(りっこくごみ)」で表現した優雅な遊びは、戦国時代になると戦に出る武将たちのリラクゼーションになったとも言われています。
六国五味とは
香木を産地と香味との組み合わせで分類した規準のこと。香道で用いる香木は東南アジア産で、伽羅(きゃら) 、羅国(らこく) 、真那伽 (まなか) 、真南蛮 (まなばん) 、寸聞多羅 (すもたら)佐曾羅 (さそら) の六国とされています。
香味は、酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(かんみ・塩味のこと)の五味とされ、六国に五味を組み合わせて分類します。
現代でも香りはアロママッサージ、お香など、癒しに用いられることが多い印象ですが、戦国時代からリラクゼーションになっていたとは驚きです。
趣のある空間で楽しむ聞香体験
聞香体験は予約制。季節によって意匠を変える京人形が飾られた趣たっぷりの和室パブリック(状況によって開催場所が変更になる可能性あり)で、静かに香りと向き合うことができます。同行者は聞香を体験したことがあるとのことでしたが、筆者は初体験。どんなことをするのか、興味津々です。
星のや京都の聞香体験では、希少な伽羅香木を用い、香りの聞き方や表現の仕方などを本格的な道具を使って教えてもらえます。
目の前には、ボトルに入ったさまざまな香りが並んでいました。一つ一つ手に取って香りを確かめてみると、馴染み深い香りもあれば、あまり馴染みのない香りもあったりと色々です。
スタッフの説明のもと、⾹炉灰(こうろばい)の入った聞香炉(ききごうろ)を使って、聞香がスタート。思いのほか、道具の種類がたくさんあって驚きました。その都度、どの道具を使うか教えてもらえるので初めてでも安心です。
⾹炉灰のなかには、火がついた⾹炭団(こうたどん)が埋め込まれた状態。ここから、香炉を左手で回転させながら、火箸で灰を中心にむけて掻きあげ山を作っていきます。
山を作ったあとは、香炉を回しながら灰押(はいおさえ)で灰山を軽く押さえ、円錐になるよう形を整えます。そのあと、灰山の頂点から⾹炭団に接するまで垂直に火箸を挿して穴を開けます。これが「火窓」と呼ばれるもので、開けた穴から赤い火が見えます。
銀葉挟で銀葉という小さなプレートを挟み、火窓の上に水平に置き、その中央に伽羅の香木をひとかけらのせます。
ここまでできたら、いよいよ香りを聞きます。左手に香炉をのせ、右手の親指と人差し指を写真のようにして香炉の上を手で覆います。親指と人差し指の間に鼻を近づけて香りを吸い込むのです。
一言で香りを表現することの難しさ
聞香では、香りを酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味の5種の組み合わせである「五味」で表現します。いざ香りを聞いてみると、たったひとかけらの香木から立ちのぼる濃厚な香りに驚きました。
そして、伽羅の香りを言葉で表現するのは、なかなか難しい……。同じ香木を使っていても、香りの立ち方や感じ方がそれぞれ違うのです。火のある場所によっても香り方が変わってくるのだそう。
同行者と香炉を交換して香りを聞いてみたのですが、同じ伽羅でも香り方がまったく違いました。筆者は香りを「酸っぱい」と表現しましたが、同行者は「甘い」と感じたそう。
正解も不正解もない香りの表現。さまざまな香りが合わさったような奥深い濃厚な香りを、五味だけで表現するのはなんとなく物足りないというか、表現が不足しているようにも感じました。昔、聞香という遊びを楽しんでいた人たちはどう感じていたのだろう……。言葉を駆使して香りを伝えたくなってしまうのは筆者だけでしょうか。
香水やアロマ、お香など、私たちの生活に当たり前のようにある香り。「聞香」を通じて一つの香りとじっくり向き合うことで、香りの楽しみ方にも幅が生まれるなと感じました。香りが好きな人には、ぜひ聞香を体験してもらいたいです。
匂い袋を作るアクティビティも
星のや京都では、キットを借りて、無料で匂い袋を作れるアクティビティもあります。作り方は簡単。好きな香りを混ぜ合わせて小袋に詰めたら、それを好きな柄の袋に入れ、紐で口をきゅっと結ぶだけ。
簡単で可愛い匂い袋のできあがりです。
星のや京都
所在地:京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
電話:050-3134-8091(星のや総合予約)
客室数:25室・チェックイン:15:00~/チェックアウト:~12:00
アクセス:阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICより車で約30分
URL:https://hoshinoya.com/kyoto/
料金:136,000円~(1室1泊あたり、食事別、税・サービス料10%込)
※スタンダードなお部屋に宿泊した場合の通常最低価格です
[All Photos by Aya Yamaguchi]
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