生物多様性の豊かさを五感で実感できる場所
最後に、メルシャンのマーケティング部の尾谷さんと田村ワイナリー長に、椀子ワイナリーやSDGsツアーのアピールポイントを聞いてみよう。まずは尾谷さんだ。
「我々が造っている日本ワインというのは、船や飛行機で海外から運んでくる輸入ワインと比べてCO²の排出量がすごく少ない。そういう面でも日本ワインを応援していただきたいです。同じ風土で育っているので、日本人は日本のブドウで造ったワインと波長が合うはず。繊細さやエレガントさを理解してもらえると思います。当然、日本の食事にも合いますしね。ぜひ、椀子ワイナリーを訪れて、ヴィンヤードを五感で感じていただいてワインをおいしく召し上がっていただけたら、というのが最大の願いです。ブドウの花って石けんの香りがするんですよ。ブドウの木の根元にある鳥の巣で卵を発見したこともあります。そういったものもぜひ見ていただきたいですね」


田村ワイナリー長は季節ごとの訪問を勧めてくれた。
「SDGsツアーで一番伝えたいことは、ブドウやワインの知識ではなく、椀子ヴィンヤードの自然環境の素晴らしさですね。畑を歩きながら、虫や草花を見つけてほしい。結構いろいろな昆虫に出合えますし、鳥が飛んでくるともっと楽しいです。また、ブドウ畑は季節によって見所が変わります。一度来られてもまた別の季節に来れば違う魅力を発見できます。SDGsツアーとスケジュールが合わなければ他のツアーでもいいですし、ツアーのない日ならワイナリーに立ち寄ってもらうだけでもいい。季節ごとに遊びに来ていただきたいなというのが私の願いですね」
椀子では、国や県指定の絶滅危惧種が見つかっている
椀子ヴィンヤードを、柔らかい下草を踏みしめながら歩いていると、風が頬をなで、木の葉がカサカサと音を立てる。ブドウを一つつまむと凝縮された甘みと酸味が口の中に広がり、甘い香りも鼻を抜ける。さまざまなチョウやトンボが出迎えるように現れ、どこからか鳥の声もする。少し高い場所から視線を広げると、30ヘクタールの広大な畑に整然と植えられた7万本のブドウの木と遠くに連なる山々が織りなす風景は、まるで絵画のように美しい。ここに広がる“二次的自然”は、まさに五感を楽しませてくれるのだ。
2024年には流行語になる可能性もあり、一般的に浸透してほしい「ネイチャーポジティブ」。それがどういう場所で実現しているのか、身をもって実感したいなら「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリーSDGsツアー」に参加するのが一番だ。