自治体と民間の企業・団体などが手を組み、住民の暮らしを支える仕組みをつくる「官民連携」について尋ねたところ、回答自治体の約8割が、既に取り組んでいるか、今後取り組みたいと考えていることが株式会社共同通信社の全国調査で7日、分かった。
遠方から加わった支援団体が自治体に次々と企業を呼び込んだケースや、市民が投稿した災害現場の映像を連携企業が防災に生かす官民連携システムをつくった例もあった。行政だけでは手の届かない課題に、企業・団体や市民の力を組み込む動きだ。一方、担当人員やノウハウの不足を挙げた自治体も4割近くに上り、連携の課題も浮かんだ。
調査は2月から4月にかけて実施、追加取材を行った。対象は47都道府県と1741市区町村の計1788自治体で、このうち817(45.7%)が回答。取り組みを進めているのは460、今後取り組みたいのは168、必要性は感じるが検討に至っていない135を合わせると763に上り、回答自治体の9割超が官民連携に必要性を認めている。
▽外の力を担い手に

人口減少と高齢化で漁業の担い手が細る三重県南伊勢町には、東日本大震災後の被災地で漁業再生に取り組んできたフィッシャーマン・ジャパン(宮城県石巻市)が入った。漁師の募集、体験、就業、定着をつなぎ、これまでに3人が町内で漁業に就いた。その縁を起点に、漁船のデジタル化を手がける福岡市の企業や、海藻養殖に取り組む高知県安芸市の企業、廃漁具の再生を進める名古屋市と大阪市の企業も集まり始めている。
静岡県磐田市は、報道ベンチャーのJX通信社(東京都千代田区)と連携し、市民のアプリ投稿や交流サイト(SNS)の情報を人工知能(AI)で解析。冠水などの被害を地図上で把握する。2023年6月の大雨では、堤防が決壊する様子を投稿動画でいち早く確認した。行政職員だけでは届かない災害現場を、市民一人一人の「目」で捉える仕組みだ。

▽一緒に見つけ、地域に残す
官民連携の利点について最も多い回答は「民間のノウハウ・専門性を活用できる」の626自治体で、財源・資金調達などを大きく上回った。求められているのは、決められた仕事を請け負うだけではない。何が問題なのかという出発点から一緒に考える相手だ。
新潟県のある自治体は「多様化する地域課題に対しては、行政単独では課題そのものに気付けない場合や、解決が困難な場合もある」と回答し、民間との意見交換が課題発見の入り口になると指摘した。
埼玉県東松山市で企業が目を付けたのは、農産物直売所で売れ残る野菜だった。食品ロス削減に取り組むコークッキング(東京都渋谷区)が、東武鉄道、JA埼玉中央、大東文化大学などと組み、東武東上線で池袋へ運んで売る仕組みを提案した。当初は赤字だったが、参加する直売所を1カ所から5カ所に増やし、黒字化にこぎ着けた。廃棄されかねなかった野菜は今、農家の収入や学生の学び、子ども食堂の弁当へと使い道が広がっている。
外から得た知識を地域に残す動きもある。兵庫県三木市は、乳幼児の睡眠改善を手がけるLullaby(ララバイ、東京都港区)と連携し、赤ちゃんの夜泣きの相談に応じるだけでなく、市民を小児睡眠のコンサルタントに育てた。既に2人が資格を取得している。外から得た専門的な知見を地元に定着させようという取り組みだ。
▽入り口に立てない
「小規模自治体では専門人員の確保が困難で、民間企業のノウハウで補完しなければ、住民サービスや地域振興事業の実施自体が難しくなる」―長野県のある自治体はこう回答した。
民間の知恵を呼び込み、事業として動かす自治体側の余力は乏しい。官民連携の難しさで最も多かったのは「担当人員・ノウハウが不足している」の305自治体。庁内体制も、案件ごとに各担当課が個別に対応する形が中心だった。
相手が見つからないという声もある。山梨県のある自治体は「人手不足に悩む地方でこそ官民連携のメリットは大きいが、民間企業の数も都市部より少なく、適切なパートナーを見つけることが困難だ」と訴えた。必要性を感じながら、連携の入り口に立ちにくい地域の実情も浮かんでいる。(株式会社共同通信社 垂見和磨)







