はばたけラボ

はばたけラボ連載 未来へつなぐ「おいしい記憶」④「手料理に込められた思い」

 未来世代のはばたきを応援する「はばたけラボ」は、2001年に香川県で産声を上げた食育活動「子どもが作る弁当の日」を応援しています。25周年を迎える今年、提唱者・竹下和男氏が全国から集まった「弁当の日おいしい記憶のエピソード募集」の応募作品を通じて、子どもたちのみずみずしい成長を伝えます。本企画は、本サイトと連動してお届けします。                

弁当の日 おいしい記憶のエピソード 全国中学校技術・家庭科研究会賞を受賞した「手料理に込められた思い」 清水 雪姫(晃華学園中学校 3年) ※学校・学年は受賞当時

 「家族全員で食卓を囲んだ記憶は全くありません」と書いた雪姫さんには、「大切な思い出として今でも私の心に深く刻まれて」いる小学校5年生の秋の夕食があります。その夕食は父親が不在だったので母さん・弟さん・雪姫さんの三人だったけれど「その日の食事の味、食卓の雰囲気、家族の笑顔や会話、その日の夕食の出来事すべてが大切な思い出」になっているのです。そして、「あの日から4年ほど経過し、今では家族全員で週に一度、食卓を囲む生活に」なったのです。

 「母が残業で帰宅が遅いのは当たり前、夜勤の多い父も週末であっても仕事で家を空けることがよくある」家族でも、ふだんの食事はしっかり食べているから健康に日々の暮らしがなりたってきています。だから雪姫さんは食卓に家族がそろうことの必要性を感じていませんでした。でもこの日の夕食で、家族みんなが暮らしていけてればいいというだけではない食卓を経験したのです。それは雪姫さんが作った夕食を、お母さんと弟さんが喜んで食べてくれて会話が弾んだ食卓でした。

 食育活動をしている方たちの間にはこんな言葉があります。「食べ物が体を作る 食べ方が心を作る」。食べ物だけで何もかも育つのであれば、必要なだけの栄養素やカロリーのある食事を与えるだけで子どもは育つのです。雪姫さんは家族がそろう「食べ方」の良さに気づいたのです。

 雪姫さんがすばらしいのは、いいと思ったことを実行し、継続していることです。ご両親はそれまでと同じように現在もお仕事をされているから共働き状態なのに、家族みんなの日程調整をして、いまは週一回、家族団らんの食事をなさっているのです。あの日、お母さんや弟さんを喜ばせたいと、インターネットで調べながら一生懸命に作った「和風のりサラダ」を囲んだ食卓は、予想をはるかに超えた時間と空間を演出してくれたのです。

 この文章を書きながら私が思いついた言葉は「体は食べ物を欲する 心は笑顔を欲する」です。それはまさにこの作文のタイトル「手料理に込められた思い」を意味しています。この作文が多くの人に読まれて、手料理を作れるようになりたいと台所に立つ子どもたちが増えていくことを心から願っています。

 「弁当の日おいしい記憶のエピソード募集」26年度詳細については、はばたけラボのホームページで。


竹下和男(たけした・かずお)/1949 年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て 2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後 2010 年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。

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#はばたけラボは、未来世代が思い切りはばたける環境づくりに取り組む共創プラットフォームです。企業・学校・地域とともに多様な取り組みを未来へつなげ、そのはばたきを支えるためにパートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。