後継者不在の課題を抱えていた機械設計事業・制御設計事業の「アイドラス株式会社」(山梨県中央市)と、ロボット製造業の「株式会社鳥取メカシステム」(鳥取県鳥取市)との間でM&Aによる資本業務提携が成立した。仲介を行ったのは日本M&Aセンター(東京) 。12月12日に甲府市内でM&A成約式が開催された。
コロナ禍でオンライン業務や交流の浸透し、通常ではあまりない山梨と鳥取という遠距離でのM&Aが成立したという。M&A成約式には、譲渡企業であるアイドラス代表取締役の石原敬三氏、譲り受け企業の鳥取メカシステム代表取締役の林正太郎氏などが出席した。このM&Aによる資本提携で株式が譲渡され、アイドラスは鳥取メカシステムのグループとなるが、アイドラスの社名や会社は今後も変わらず、代表の石原氏も継続勤務予定。
省力化・自動化装置の製造装置のメカ設計の事業を行う山梨県のアイドラスの代表取締役である石原氏は60歳。親族や従業員への事業承継が難しいため後継者不在となっていた。将来的な後継者不在問題を解決し、より規模の大きい企業と提携することで人材採用面を強化し、売上拡大につなげ会社をさらに発展させることを目指し、M&Aによる早期事業承継を決断したという。
譲り受け企業の株式会社鳥取メカシステムは、鳥取県内でロボット製造業を営む中堅企業。省力化・自動化装置など製造装置の設計・組立・据え付けなど川上から川下まで行っている。県内での設計の人材採用に課題を抱えており、設計のスペシャリストが多数在籍するアイドラスを譲り受けた。
アイドラスの石原氏は、「需要があっても人員不足で対応できない案件が多数あった。また社員と一緒に持っていた『工場が欲しい』という夢も実現できていなかった。鳥取メカシステムは、設計から製造まで自社で一貫して行っている“メーカーでありブランド”。近年は、配膳ロボットや車の自動運転など、ますますFAの技術は生活に関わってくる。これからさらに伸びていく業界で、鳥取メカシステムと一緒に成長していきたい」とコメントした。鳥取メカシステムの林氏は、「鳥取メカシステムのメカ設計部門では、人手不足の中で10人ほどの従業員が頑張っている。設計部門は人材の確保が難しい中で、今回良縁を頂いた。アイドラスはこれから伸びしろのある会社。一緒にうなぎ上りで売上・利益を伸ばしていきたい」と抱負を語った。
日本M&Aセンターは、2021年に山梨県内企業401社が廃業を選択し、うち54.8%が黒字にもかかわらず廃業を選択(帝国データバンクによる)していると指摘。地域に根差した黒字企業が後継者不在で廃業を選択すれば、地域経済や文化にも大きな悪影響を及ぼすと危機感を抱き、後継者不在企業が1社でも多くM&Aによって廃業の危機から救われ成長戦略を描くことを目指している。
同センターは、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを企業理念とし、国内7拠点、海外5拠点(日本M&Aセンターホールディングスの現地法人含む)を構える。創業以来30年間で、累計7000件を超えるM&A支援実績を持っている。