後継者不在の課題を抱えていた野菜調理器製造事業の「株式会社ベンリナー」(山口県岩国市)が、日本M&Aセンター(東京)の仲介で、特殊印刷品製造業の三光産業株式会社(東京)との間でM&Aによる資本業務提携が成立。12月22日に広島市内でM&A成約式が開催された。
M&A成約式には、譲渡企業であるベンリナー代表取締役の山本始氏、譲り受け企業の三光産業代表取締役社長執行役員の石井正和氏などが出席した。
プロから一般家庭まで幅広く使える野菜調理器の製造事業を行うベンリナーの代表取締役である山本氏は、60歳。親族や従業員への事業承継が難しく後継者不在となっていた。また、同社は世界30カ国で商品を販売しており需要が高いものの、生産が追い付いていなかった。生産量を増やし需要に対応するため工場の増築や新築の必要があり、将来的な後継者不在問題解決やさらなる成長を推進するため、M&Aによる事業承継を決断したという。山本氏はM&A後も継続勤務予定。
三光産業は、接着剤付きのラベル・ステッカーなど特殊印刷品製造を行う東証スタンダード上場企業。粘着剤・接着剤付印刷物の分野におけるリーディングカンパニーとして、販売力に強みを持ち、日本・アジアでの販売網を築き上げている。主力事業である印刷業の市場は縮小傾向で、収益力のあるビジネス領域の裾野を広げていく必要があり、高い製品力やアメリカ・ヨーロッパでの販売実績のあるベンリナー社を譲り受けた。
ベンリナーの山本氏は、「11月中旬に三光産業の石井社長とお会いし、『メードインジャパンを海外に向け発信し、販売していきたい』という思いがぴったり一致し、三光産業への譲渡を決断した。ベンリナーは職人が多いので次世代の経営を担う人材がいなかった。また、海外への輸出も多いので、そこに精通した人材を獲得するためには、大手企業と提携することが最善だと考えた。三光産業と一緒にさらなる成長を促進していきたい」とコメント。
三光産業の石井氏は、「ベンリナーのものづくりのスピード感、丁寧さに魅力を感じた。三光産業のネットワークを利用しながら、世界中でどんどんベンリナーの商品を販売拡大し、消費者に使っていただきたい。まずは増産体制を構築し、需要に応えられていない部分を解消したい」と抱負を語った。
帝国データバンクによると、2022年の山口県内企業の後継者不在の企業は65.3%(全国平均57.2%)で、全国で8番目の高さ。2021年には524の県内企業が廃業を選択している。同センターは、地域に根差した黒字企業が後継者不在で廃業を選択すれば、地域経済や文化にも大きな悪影響を及ぼすと危機感を抱き、後継者不在企業が1社でも多くM&Aによって廃業の危機から救われ成長戦略を描くことを目指している。
同センターは、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを企業理念とし、国内7拠点、海外5拠点(日本M&Aセンターホールディングスの現地法人含む)を構える。創業以来30年間で、累計7000件を超えるM&A支援実績を持っている。