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特集『俳優・渥美清――「寅さん」だけじゃない映画人生』 1月7日から神保町シアターで厳選された16本を上映

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 「男はつらいよ」シリーズで国民的スターとなった渥美清の、あまり知られていない“寅さん”以外の作品を振り返る特集上映『俳優・渥美清――「寅さん」だけじゃない映画人生』が1月7日(土)から2月3日(金)まで開催される。

 上映劇場は神保町シアター(千代田区神田神保町1-23:03-5281-5132)。入場料金は、一般1300円、シニア1100円、学生900円。上映日時などは神保町シアターのウェブサイトまで。

 今回は主演作のみならず、その独特な風貌と個性でわき役に徹して強い印象を残した作品から16本をセレクト、すべて35mmフィルムで上映される。時代遅れの粋な役者—―その知られざる映画人生がスクリーンで堪能できるまたとない機会だ。

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 上映作品は以下の16本。

 〇『あいつばかりが何故もてる』(昭和37年)松竹大船/白黒/1時間24分/監督:酒井欣也
 銀座を舞台に、人情派スリ・善六(渥美)と女子大生・マリ子(倍賞千恵子)が繰り広げる騒動を描いた痛快喜劇。

〇『続 拝啓天皇陛下様』(昭和39年)松竹大船/カラー/1時間34分/監督:野村芳太郎
 軍隊はどんな人間も平等だと信じて勇躍入隊した天涯孤独の男(渥美)は、献納犬の飼育係になるが・・・。

〇『かあちゃんと11人の子ども』(昭和41年)松竹大船/カラー/1時間46分/監督:五所平之助
 大正後期に伊豆の農家に若くして嫁いだ女性とその家族の姿を、実話を基に描く。渥美は、誠実で仕事熱心な家長役で、子だくさんの愛情深い父を印象的に演じている。

〇『父子草』(昭和42年)東宝=宝塚映画/白黒/1時間25分/監督:丸山誠治
 日雇い労働者の義太郎(渥美)は、なじみの屋台で出会った苦学生に生き別れた息子の面影を見て、一世一代の勝負に出る――。渥美ならではのユーモアも暖かい感動編。

〇『喜劇・団地親分』(昭和37年)松竹京都/カラー/1時間22分/監督:市村泰一
 上方喜劇やテレビ界で活躍したスター脚本家・花登筐のシナリオを、関西喜劇人協会製作で映画化した爆笑編。同時代に活躍した喜劇人たちが総出演した東西お笑い対決! 渥美の出番は少ないが、珍しい顔合わせが楽しめる。

〇『拝啓総理大臣様』(昭和39年)松竹大船/カラー/1時間29分/監督:野村芳太郎
 売れない芸人・角丸(渥美)は、かつての相方で今は夫婦漫才の大スター・ムーラン(長門裕之)に感化され再起をかけるが――。

〇『喜劇 急行列車』(昭和42年)東映東京/カラー/1時間31分/監督:瀬川昌治
 喜劇路線を模索した東映が渥美を主演に迎えて製作した「列車シリーズ」第一作。妻子持ちで鉄道オタクの車掌・吾一(渥美)は、寝台列車で初恋の女性(佐久間良子)と再会し・・・。

〇『友情』(昭和50年)松竹大船/カラー/1時間32分/監督:宮崎晃
 年上のOL・紀子(松坂慶子)と同棲中の学生・宏(中村勘九郎5代目)は、生活のために工事現場で働き始め、ベテラン労働者・源太郎(渥美)と心を通わす――。

〇『散歩する霊柩車』(昭和39年)東映東京/白黒/1時間28分/監督:佐藤肇
 豊満な肉体で男達を手玉に取る妻(春川ますみ)の情夫たちをゆすろうと、タクシー運転手の麻見(西村晃)は奇妙な罠を企てるが・・・。渥美扮(ふん)する運転手が乗った霊きゅう車が、五輪前夜の混乱した東京を駆け巡る異色のスリラーコメディー。

〇『僕はボディガード』(昭和39年)宝塚映画/カラー/1時間33分/監督:久松静児
 人一倍正義感が強い田舎者の青年(渥美)が、柔道の腕前を見込まれて美人のボディーガードになり、あれよあれよと出世街道をひた走る!

〇『喜劇・爬虫類』(昭和43年)松竹大船/カラー/1時間31分/監督:渡辺祐介
 グラマーな金髪娘と四人のヒモ男たちの一座は、違法なストリップのドサ回りでぼろもうけをしていたが、警察やヤクザに追い回されて解散の危機に――。

〇『あゝ声なき友』(昭和47年)渥美プロ=松竹/カラー/1時間43分/監督:今井正
 戦友たちの遺書を抱いて帰還した分隊唯一の生き残り・民次(渥美)は、戦友たちの遺族をたずねて全国を旅することに――。

〇『沓掛時次郎 遊侠一匹』(昭和41年)東映京都/カラー/1時間30分/監督:加藤泰
 気ままな旅の道連れだった朝吉(渥美)を予期せず亡くした渡世人・時次郎(中村錦之助)は、傷心の道中で、渡世の義理で切った男の女房(池内淳子)と息子に会う・・・。

〇『白昼堂々』(昭和43年)松竹大船/カラー/1時間39分/監督:野村芳太郎
 天才スリ師・ワタ勝(渥美)は、一度は堅気になったが、失業をきっかけに現役復帰。筑豊の廃坑村を根城に、かつての仲間と全国で荒稼ぎを始めるが・・・。

〇『男はつらいよ フーテンの寅』(昭和45年)松竹大船/カラー/1時間30分/監督:森崎東
 「寅さんじゃない」という特集主旨ではあるが、「やはり渥美清といえば寅さんでしょ!」ということで、シリーズ48本中たった二本しかない「山田洋次監督じゃない」第三作目を。舞台は三重県湯の山温泉。マドンナは新珠三千代。

〇『キネマの天地』(昭和61年)松竹/カラー/2時間15分/監督:山田洋次
 昭和初期、大船への移転を控えた松竹蒲田撮影所を舞台に、浅草の映画館の売り子からスター女優への階段を駆け上がる娘とその父との絆、そして映画に人生を捧げる活動屋たちの情熱を描いた感動巨編。とにかく渥美に泣かされるだろう。

 1928年、東京・上野に生まれた渥美は、軽演劇の役者などを経て、終戦後は浅草・フランス座などでコメディアンとして活躍。1950年代後半からはテレビ界に進出し、『夢であいましょう』、『若い季節』などで人気を博し、映画界では1963年に主演した『拝啓 天皇陛下様』の演技が高く評価され、喜劇のみならず時代劇や人間ドラマなど幅広いジャンルの映画に出演。代表作の『男はつらいよ』シリーズは1969年から始まり、1995年までの間に48作が公開され、主人公・車寅次郎として国民的スターの地位を確立していった。1996年、68才で逝去。同年没後、国民栄誉賞が贈られた。