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藤ヶ谷太輔「楽しかった思い出は一つもない」 三浦大輔監督との過酷な撮影を明かす 映画『そして僕は途方に暮れる』【インタビュー】

 2018年にシアターコクーンで上演され、各所から称賛を浴びたオリジナルの舞台を、脚本・監督の三浦大輔と主演の藤ヶ谷太輔が再タッグを組み、映画化した『そして僕は途方に暮れる』が、1月13日から公開される。本作で藤ヶ谷が演じるのは、平凡なフリーター・菅原裕一。ほんのささいなことから、恋人、親友、先輩や後輩、家族…とあらゆる人間関係を断ち切り、逃亡する姿を描く。藤ヶ谷と三浦監督に、過酷だったという撮影の裏話を聞いた。

(C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

-この作品を映画にという思いは、以前からあったのですか。

三浦 舞台を作っている時から、映像化できないかなという思いはずっとありました。僕の中で、藤ヶ谷くんの表情がとても印象的だったんです。その表情を映像ならばもっと伝えられるし、舞台とはまた違った『そして僕は途方に暮れる』ができるんじゃないかとも思っていたので、今回、なんとか実現できて良かったです。

-藤ヶ谷さんは、映画化の話を聞いてどう感じましたか。

藤ヶ谷 また裕一に会えるんだという喜びと、舞台でできなかったことを立体としてお見せできるのではないかという期待があったのですが、同時に、これは相当ハードな撮影になるなと(笑)。

-実際に、ハードな撮影になりましたか。

藤ヶ谷 まず、楽しかった思い出は一つもないです。なので、舞台あいさつで共演者の方と、「あのシーンではあんなことあったよね」「やめてくださいよー」みたいな、楽しいやり取りは一切できないと思います(笑)。舞台の稽古もそうでしたが、三浦さんの中での「OK」はどこなのか、小さな穴に細い針を通し続けるような感覚で演じていました。ここだ!と思っても、次のシーンではそこじゃないこともあって…。

-OKテイクが出るときは、藤ヶ谷さん自身にも手応えはありましたか。

藤ヶ谷 あるときもありましたし、分からないときもありました。一回でOKということは100パーセントなかったので、模索しながら演じていました。なので、出来上がった映像を見たときに、自分がどんどんやつれていく感じがリアルに映っていて、こんなことになっていたんだと(笑)。この現場に、裕一にしてもらったという感覚でした。三浦さんは、こうしてお話していても分かるように、すごく柔らかい方で、撮影のときも、お昼ご飯を食べながら「今日こそ早く帰りたいよね」なんて会話をしているんですよ。それなのに、現場に入ってモニターの前に座ると人格が変わるんです(笑)。

三浦 それは僕の悪いところです(笑)。藤ヶ谷くんが全身全霊で演じてくださっていたので、僕としても必死にならざるを得なかったんです。

-舞台の演出とはまた違う感覚でしたか。

三浦 むしろ僕がテイクを重ねるのは、舞台出身ということが関係しているのかもしれません。舞台は、その場で起きたことを稽古して作り上げていくものだと思うので、映像でも同じようにその場で細かい点まで訂正しながら完璧に作り上げるものだと、どこか考えてしまっているのだと思います。僕がまだ力を抜くべきところだったり、時間をかける必要性だったりをつかみ切れていなくて、全カットを必死に撮ってしまうということは反省点としてあります。