2011年3月11日、東日本大震災による巨大津波が東京電力福島第一原発を襲った。その大事故は、それまで地元福島県三春町をはじめとした日本の職人の写真を撮っていた飛田晋秀(ひだ・しんしゅう)さんの人生を変える。
ある時、小学校低学年の女の子から「私、大きくなったらお嫁さんに行けるかな?」と聞かれて、飛田さんは「ごめんね」という言葉しか出てこなく、口ごもってしまった。
大きなショックを受けると同時に一つの覚悟が固まった。「原発事故は私たちの世代だけで終わる話ではありません。子供たちのことを考えると、他人ごとではいられない」。それ以降、現在に至るまで、飛田さんは原発被災地の写真を撮り続けている。
必ず空間放射線量を測りつつ、被災者の思いに耳を傾ける。「原発被災地の現実を広く知ってほしい」——その思いで見つめ続けた12年。
飛田さんが撮影した写真の数々とともに自身の経験を語る「福島の今を撮り続ける~写真家が見た十二年」が、3月2日(木)に開催される。場所は武蔵野公会堂パープルホール(武蔵野市吉祥寺南町1-6-22)で、午後7時開演だ。
参加費は一般2000円、23歳以下無料。全席自由。事前予約・事前振込。予約・問い合わせは090-2474-7911あるいはメールfkomou@gmail.comまで。
当日は、藤野由佳さんとクリストファー・ハーディさんのアコーディオン&パーカッション・デュオの演奏、金子あいさんの詩の朗読も楽しめる。
飛田さんは1947年福島県田村郡出身。福島第一原発事故後、事故を風化させない、事故後の状況をありのままに知ってほしい、福島県民の思いを知ってほしいとの思いから、原発被災地を幾度となく訪れ、現在にいたるまで撮影し続けている。
写真展、講演を地元福島はもとより、東京、大阪、愛知、北海道ほか日本各地で実施している。1999年、「三春の職人」を朝日新聞福島県版で長期連載(写真集は国立国会図書館に民俗資料として永久保存)。わらさ細工、活版印刷など50人あまりの職人が紹介されている。2019年、写真集『福島のすがた~3.11で止まった町』(旬報社)を出版。