京都の寺院といわれれば、木造建築や土壁、瓦屋根を想像するが、ここは特別だ。本願寺伝道院(京都市)は、明治後期に伊東忠太が設計したイスラム・イギリス・日本などの建築様式を取り入れた建造物で、国の重要文化財に指定されている。12月3日に、ここで講演会と特別公開が実施される。
明治から大正にかけ、ルネッサンスやゴシック様式といった欧米の技術の模倣が主流だった時代に、東洋を感じさせる先駆的ともいえる建造物で、日本の近代建築を知るうえでも貴重な建物。イギリスの建物をイメージした総レンガ造り風のタイル張りの外観、インド・サラセン風のドームなど、さまざまな建築様式を取り入れている。
屋根は銅板ぶき、屋根骨組みは木造、屋根の装飾には一見石に見えるテラコッタを用いている。羽をもった象などユーモラスな架空の珍獣がまわりの石柵に配されているのも特徴的。内部は、和風意匠の天井にアール・ヌーボーを意識した照明器具が取り付けられている。
講演は、建築家・藤森 照信氏による「伊東忠太の思想と建築」。この日は、通常は非公開の内部を特別に見ることができる。参加費は1,000円以上(文化財保護の寄付として)。講演会は無料のライブ配信もある。