未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、子どもの不登校についての悩みにアドバイスします。
たびたび学校に行くのを嫌がります。 どう対応したらいいでしょうか?
【質問】
小学校2年生の息子が、最近になって、たびたび学校に行くのを渋るようになりました。嫌いなお友達がいるようなのですが、詳しくは話したがりません。どうやら前日に学校で嫌なことがあると、翌日は学校を休みたがります。スムーズに出かけていく日もあります。一度は休ませてみたものの、このまま学校にまったく行かなくなってしまったらどうしようかと不安です。
▼コロナ禍で空白になってしまった「コミュニケーション能力」を育てなおしてみては?
【竹下和男先生の回答】
ご心配なことでしょう。長引くと引きこもりになるという不安を、親はなかなかぬぐえません。でも、息子さんはスムーズに登校できる日もあるし「嫌いな友だち」や「嫌なこと」を、登校をしぶる理由としてあげているのがちょっと安心材料です。というのは、不登校や引きこもりを経験し、今は普通に生活できている大人たちに、当時のことを思い出してもらって原因をたずねても、答えられないケースの方が多いのです。しかし、友だちからのいじめや教師の不適切な対応等、不登校のきっかけが明確な時は、それが解消すればとりあえず登校できるようになります。
ただし復帰後も、お互いのしこりは長く続くことがあります。ですから、まずは担任の先生にご相談なさってはいかがでしょう。他の親子からの訴えがあれば、それもあわせて良い対応をしていただけると思います。
ただ、今回のご相談から、私は全国規模の課題として学校側が取り組む必要性を感じています。不登校は約40年近く微増傾向が続いていたのですが、この2年間で約60%も不登校引きこもり児童生徒数は増加したのです(文科省発表令和2年19.6万人・令和4年29.9万人)。
昨年5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが5類になって、1年がたとうとしています。世間の大人たち(親・教師)は、新型コロナ禍以前のふつうの「元の生活」にもどると考えていますが、幼い子どもたちには戻るべきふつうの「元の生活」が心の中に形成されていないのです。マスクなしで自由に語り合い群がって遊ぶ学校生活はこの3年間、「してはいけない」ことと教えられています。そんな学校生活が、不登校児童生徒数の急増の重要な要因と思えるのです。ですから、あなたのお子さんだけの問題ではなく、全国の子どもたちが、コミュニケーション能力が未熟な状態であるがゆえに、学校生活での「嫌いなお友だち」や「嫌なこと」を増やしていると考えています。
そこでコロナ禍の空白を埋めるために子どもたちの「育ちなおし」を試みてはどうでしょう。例えば、コミュニケーション能力が高まるような楽しいグループの活動を多く取り入れた学習や、歓声を上げながら走り回るような運動量の多い集団遊びを、積極的に学校生活に取り入れていくことを提案します。
子どもたちの成長を喜ぶ大人たちの笑顔も、子どもたちに見せていきたいものです。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップ、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。