未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、子どものゲームについての悩みにアドバイスします。
小学生がオンラインゲーム? ゲーム機を買い与えるべきか迷います
【質問】
小学校3年生の息子がいます。最近、多くのお友達がゲーム機を持っているようです。うちは買い与えておらず、友達と遊ぶときは借りることも多いとのこと。また、友達同士で、一緒にいるときも、お互いの家からも、オンラインでつながって遊んでいる子がいるようです。息子からはゲーム機が欲しいとせがまれていますが、特にオンラインで遊ばせるのは危険ではないかと心配しています。
▼子どもに「遊びの時間」は必要 ただし、親子で真剣に話し合ってみては?
【竹下和男先生の回答】
買い与えたくないという本音があるから生まれる相談ですよね。ビデオゲームやオンラインゲームの、ゲーム依存症やゲーム課金による被害状況は深刻な現実です。にもかかわらず、多くの子どもがゲーム機を持ち日常的に仲間と一緒に興じています。しかし、放課後に群れになって友だちと遊ぶことの価値を考えると、ゲームに夢中になることは「百害あって一利なし」ではなくて、二利も三利もあるのです。
「子どもは遊びの天才」という言葉があります。屋外で群れになって年齢層の異なる子どもたちが遊ぶときは、遊具やスポーツ用品や玩具がなくても棒っ切れや石ころを道具にしてしまいます。年齢差があっても、変則ルールを作って全員参加を実現します。創意・工夫を楽しみながら社会性が育っていきます。少年期のこのような時間をわたしは「あそびの時間」と名づけています。子どもが大人になるための大切な時間です。
ところが「あそびの時間」を無視した社会を、大人たちが作ってしまいました。子どもたちから時間・仲間・空間の三つの「間」を奪ったのです。自由に遊べる放課後の時間が塾通い等でなくなりました。多くの子どもが塾に通っているから遊び仲間も作れません。不審者による犯罪の心配がない安全な空間も減ってしまいました。
こんな状況下で社会性を身につける役割として、ゲーム機に興じている友だちとの時間が、その一部を担っています。楽しい共通の話題で語り合うことや、互いの個性をぶつけ合いつつ共感できる時間を過ごせるのです。となると、ゲーム機等の弊害対策を購入前に親子でよく話し合っておくことが大切です。
依存症防止のためにゲーム機使用の時間と時刻を決めましょう。例えば「夜9時までの一日1時間」です。約束していた時間をすぎて「止めなさい」と言われても止められなかったり、怒りっぽくなったりすると依存症の兆候です。子どもの心がゲーム機に支配されています。その場合は「3日間使用禁止」とかのルールを決めておくことも重要です。この約束が何度も破られると依存症ですので、自力での解決は早々にあきらめて専門家による治療がお薦めです。依存症を決して甘く見てはいけません。
ゲーム課金対策としては、「全面禁止」にすべきです。大人でも抜け出せない怖さがあります。課金の額も子どもの小遣いでは収まらなくなります。
真剣に約束事を決めていくうちに「もう少し我慢する」と言ってくれたら、その方がベターですね。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
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