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中小企業のサステナビリティ経営支援 大同生命保険がガイドを作成

中小企業のサステナビリティ経営を支援するガイドを作成した大同生命保険サステナビリティ経営推進室の久保村広美さん(右)と伊神幸宏さん=東京都中央区の大同生命保険東京本社、2024年4月25日

 気候変動など環境問題への世界的な関心の高まりを意識し「SDGs」(持続可能な開発目標)や「サステナビリティ」(持続可能性)を切り口に事業展望を語る経営者は多い。いまはSNSで企業の評判が世界を瞬時に駆け巡る時代。世界の市場を相手にする企業は、世界標準のキーワードで自社や商品の魅力をアピールできなければ、市場から即刻退場を食らいかねない。

 中小企業の信頼されるパートナーを目指す大同生命保険(大阪市西区)は、中小企業が無理なく「サステナビリティ経営」(環境・社会への配慮により事業の持続的成長を図る経営)に踏み出す手順を示した冊子「中小企業向け サステナビリティ経営実践ガイド」をこのほど、約5万部作成した。3500人以上の営業職員や税理士等の代理店を介して、関係する全国の中小企業経営者に配布し、サステナビリティ経営に向けた小さな一歩の足掛かりを提供する。

「中小企業と共に素晴らしい未来社会を築きたい」と語る大同生命保険サステナビリティ経営推進室長の久保村広美さん

 

 大同生命保険サステナビリティ経営推進室長の久保村広美さんは「大同生命には、想う心とつながる力で中小企業とともに未来を創るというミッションがあり、昨年3月に策定した推進計画の中で中小企業のサステナビリティ経営支援を掲げた。中小企業の皆さまを応援することは、大同生命自身のサステナビリティ経営の核心部分であり、共に素晴らしい未来社会を築きたい」と意気込む。

 ガイド作成の発端は、毎年7千~8千社の中小企業経営者を対象に実施する調査(大同生命サーベイ)でサステナビリティ経営の認知度が予想より低いことだった。認知度は年々上がっているものの最も高い2023年調査時点でも半数を下回る47%。「すでにサステナビリティ経営を取り入れている」との回答は4割にも届かない33%だった。

 ガイドの作成業務を担当した大同生命保険サステナビリティ経営推進室課長の伊神幸宏さんは「従業員10人未満の中小企業も多く、多忙や人手不足などから、経営者がサステナビリティ経営の検討になかなか着手できない実情がある」と分析する。

「サステナビリティ経営に取り組むことで中小企業は成長する」と指摘する大同生命保険サステナビリティ経営推進室課長の伊神幸宏さん

 

 この調査結果は、中小企業と共に発展の歴史を刻んできた大同生命にとっては見過ごせない事態だ。このままでは、サステナビリティ経営やSDGsの実践を取引・融資条件に挙げる大企業・金融機関と関係を築けない中小企業が出てきてしまう。また中小企業がサステナビリティ経営に背を向けることで、既存事業の成長の機会を自ら閉ざしてしまう恐れもある。

 ただ悲観材料ばかりではない。コスト削減目的の省エネや従業員定着策の福利厚生など、中小企業が当たり前にやっている取り組みには、サステナビリティ経営の実践に値するものも少なくなく、中小企業がサステナビリティ経営に向き合う際のヒントがあった。久保村さんは「中小企業の多くが、意識せずに実践している場合がある。大小にかかわらずサステナビリティ経営の要素として位置付け、積極的に発信していくべき」と指摘する。

 この“無意識のサステナビリティ経営”を、中小企業の経営者や従業員が意識するだけでも、立派な第一歩になる。今回作成したガイドはこの第一歩を一番の目的にしている。

 ガイド作成の実務を統括した伊神さんは「徹底的に分かりやすさを追求した」と話す。「サーベイ(調査)の数字を見て、忙しい経営者にも読んでもらえるよう、適度な分量で読みやすく、親しみやすい、サステナビリティ経営のガイドの必要性を痛感した。昨年7月から検討を始め、外部の識者の指摘も踏まえ、サステナビリティ経営推進室の4人の職員で実質約8カ月かけて作り上げた」

「中小企業向け サステナビリティ経営実践ガイド」の表紙。イラストのらせん階段は4段階の各ステップを表現。下から順にA、B、C、Dの各段階にそれぞれ付与された赤、青、緑、紺のステップカラーで彩られている

 

 ガイドは、順を踏んでサステナビリティ経営が実現できるよう、4段階のステップを設け、中小企業経営者が各ステップの課題に取り組めば、一歩、一歩着実に前に進める構成になっている。

 伊神さんは「中小企業の皆さまに実際に使ってもらわないと意味がないので、いろいろ工夫した。ガイド監修者の家森信善・神戸大教授には親しみやすいイラストの姿でガイドにご登場いただき、サステナビリティ経営の取り組みで大切なことを解説してもらった」と述べ、読んで、使ってもらうための細部にわたる工夫を説明した。

 伊神さんらが分かりやすさに徹底的にこだわり、色分けやイラストなど工夫を重ねたガイドの分量は結局39ページに。伊神さんは「ちょっとページが多かったかなあ」と反省するが、分かりやすさを徹底する一方で、正確性や内容の充実度をおろそかにはしなかった。

 この点はガイド利用者の負担と便宜を考え、ガイドの概要を簡潔にまとめた資料を今後作成する予定という。