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「寅子は一生懸命答えを探して迷い続ける」 「虎に翼」の舞台裏を制作統括・尾崎裕和氏が語る【インタビュー】

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。裁判官として、母として、そして1人の人間として、悩みながらもさまざまな経験を積んで成長してきた主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)の物語は、まもなく終盤を迎える。この機会に、制作統括を務める尾崎裕和氏が、これまでの物語を振り返り、その舞台裏や物語に込めた思いを語ってくれた。

(C)NHK

-物語も後半を迎え、寅子も中年期に差し掛かってきました。この時期の寅子を描く上で心がけていることは?

 脚本の吉田(恵里香)さんとは、寅子には年齢を重ねることで丸くなったり、物わかりが良くなったりしない年の重ね方をさせたいと話しています。当然、年齢とともにいろんなことを経験し、視野は広がっていきますが、だからといって、変に物わかりが良くなるのではなく、言うべきことは言う寅子らしさは残していきたいと。

-その一方で、寅子は裁判官になっても失敗や迷いを繰り返し、不完全なままのようですね。

 年齢を重ねたからといって完璧な人間になるわけではなく、寅子は一生懸命答えを探して迷い続けていきます。そんな姿を描くため、裁判官という立場であっても、悩み考え続ける寅子を、しっかり見せたいと思っています。劇中でも語られていましたが、だからこそ、裁判には3人の合議制の仕組みがあり、裁判官同士が話し合い、議論を戦わせた上で判決を出すことになっているわけです。悩み考え続けるのは、実際の裁判官も同じではないでしょうか。

-ここ最近では、寅子の再婚に関連して、夫婦別姓や同性婚といった昨今、社会的に議論となっているテーマを物語に取り入れている点が目を引きました。

 第21週で、いわゆる「事実婚」という形で寅子と星航一(岡田将生)が結婚することになりました。これは、あらがじめどんな形で結婚するか決めていたわけではなく、物語が進む中で吉田さんと話し合った末に出した結論です。この物語と共に成長してきた寅子なら、2度目の結婚であることや民法の改正に自身が携わったことなど、これまで人生で積み重ねてきたことを踏まえ、こんなふうに考えるのでは、と。轟(太一/戸塚純貴)のパートナーの遠藤時雄(和田正人)については、轟は最初から同性愛者と決めていたので、ドラマが進めば、パートナーと出会うことは必然だろうと。

-そういったテーマをドラマで描くことには大きな意義があるのと同時に、議論を呼ぶ可能性もあります。その点はどのようにお考えでしょうか。

 ドラマでこういったテーマを扱うことは、「問いかけ」のようなものだと思っています。どう受け止めるかは、ご覧になる方の自由です。ドラマの登場人物である寅子や轟たちが、こう考えて行動した、ということが、何かを考えるきっかけになればと。