カルチャー

朝ドラ『ばけばけ』の世界観を支える一冊 小泉八雲と妻・セツの13年をつづった『思ひ出の記』

 この秋からスタートしたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の制作過程で、制作プロデューサーたちが参考として読んだという『思ひ出の記』(小泉セツ著、税込み1760円、谷口印刷・ハーベスト出版)。異文化を超えて寄り添った夫婦の13年をつづったこの一冊は、小泉八雲記念館監修のもとで昨年暮れに新装版として刊行されている。表題作に加えて、小泉セツの手記「オヂイ様のはなし」、「幼少の頃の思い出」(池田記念美術館所蔵)を初収録。ドラマを見ながら読むもよし、見ていなくてもドラマの世界が読み取れるかもしれない。

 著者は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻。八雲との13年8カ月にわたる結婚生活をセツのまなざしから描いた同書は、文豪ラフカディオ・ハーンの“人間”としての実像を浮かび上がらせる。旧仮名づかいを現代表記に改め、新たに「注」を設けるなど、幅広い年代の読者に親しみやすい形に再編集されている。

 解説は、小泉八雲記念館館長で小泉セツのひ孫にあたる小泉凡氏が執筆。『思ひ出の記』は、セツの人生のいわばクライマックス期における、妻として、リテラリー・アシスタントとして、そして何よりも家族として、ハーンの最も身近にいた者の回想記である」と評している。