チーズ好きにはうれしい研究結果が発表された。
株式会社明治と、公立大学法人新見公立大学(岡山県新見市)らは、日本老年学的評価研究(JAGES)による高齢者を対象とした追跡調査データを用いた解析により、週1回以上のチーズ摂取習慣が認知症発症率の低下と関連することを明らかにした。この研究成果は、栄養学分野で評価の高い国際学術誌Nutrientsに2025年10月25日に掲載 (Jeong et al. Nutrients, 2025, ) された。
乳製品と認知機能の関連性を示す論文は国内外で数多く報告されており、中でも特にチーズに豊富に含まれる栄養素や発酵成分が認知機能に与える影響が注目されている。しかし、これらの先行研究の多くは欧米諸国を対象としたものであり、食習慣や遺伝的背景の異なる日本人における報告はほとんどない。そのため、さまざまな研究機関が共同で、日本の高齢者を対象にチーズの摂取習慣や摂取するチーズの種類と認知機能の関連性を明らかにすることを目的とした研究を推進してきた。
これまでの調査研究の結果、日常的なチーズの摂取習慣が認知機能の高さと関連する重要な因子であることが判明。さらに、日本の高齢女性を対象に調査した研究では、チーズの中でもカマンベールチーズを日常的に摂取することと認知機能の高さの関連性が明らかになっているという。
ただ、これらの研究はある一時点での食品摂取状況とその時の認知機能の関連性を評価した横断研究であり、チーズ摂取と認知機能維持に関する因果関係を示す追跡研究の論文はほとんど報告されていなかった。そこで今回、明治と新見公立大学のチームは、チーズ摂取と認知症発症状況の関係を明らかにするために3年間の長期追跡調査を実施した。
日本の各市町村に居住し要介護認定を受けず自立した生活を送っている65歳以上の高齢者を対象に、郵送でのアンケート調査を実施した結果、2019年は64自治体から2万6408人分の有効回答が得られたという。有効回答のうち、2022年時点の長期介護保険認定および保険料のデータとの連携がなされている39自治体1万3759人分のデータを抽出し、そのうち除外基準に該当しない1万180人分のデータを解析対象としている。
3年の追跡期間の結果、チーズ摂取者では134人(3.39%)、非摂取者では176人(4.45%)が認知症を発症したことが判明。チーズを日常的に摂取していることと認知症の発症しにくさが有意に関連していることが示された。この結果は肉・魚および野菜・果物の摂取量について調整しても同様の傾向を示したという。
明治は、同研究の結果から、地域在住の日本の高齢者において、チーズを日常的に摂取することが認知症発症リスクを有意に抑えられるのではないか、としている。










