ライフスタイル

自分の声を丁寧に拾う 【平井理央 コラムNEWS箸休め】

 最近、〝月経まわりのゆらぎを血糖値で可視化する研究〟に参加するため、スマートウオッチと血糖値センサーを着ける生活が始まりました。難しい研究…というより、自分のリズムをそっと覗(のぞ)きにいくような、そんな実証記録です。

 きっかけは、私の作ったチョコレートブランド VIVID CACAOが、この研究に参画することになったこと。普段の生活データに加えて、VIVID CACAOを食べる人と食べない人とでどんな違いが生まれるのかも見ていきます。そこに〝自分自身〟が入ることで、思いがけず日常と丁寧に向き合う、特別な時間にもなっています。

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 血糖値を測るようになって驚いたのは、「なんとなく」が全部数字で返ってくること。ぼんやりしていた日にも、ちゃんと〝理由〟がある。あくまで個人の体験ですが、好物のタイラーメンやスンドゥブチゲを食べた日は、グラフがジェットコースターみたいに跳ねあがり、思わず吹き出してしまうほどです。あれ以来、辛いものとの距離感は少し慎重に。数値って、時に容赦ない。

 そしてスマートウオッチは、すっかり相棒のような存在に。仕事の本番前、ステージ脇でそっと気持ちを整えているその瞬間に限って、「さあ、今から15分バドミントンしませんか?」と誘ってくるのです。こちらは台本や段取りの最終確認で頭がいっぱいなのに、そんな無邪気な提案をしてくるものだから、つい笑ってしまう。緊張がふっとほどけて心が軽くなる、天然なのか計算なのか・・・思わずニヤリとしてしまいました。

 今回の取り組みを通して感じているのは、健康づくりって〝がんばる〟ことではなく、自分の声を丁寧に拾うことなのだということ。食べもの、睡眠、気分、ホルモンのゆれ・・・。それぞれの小さな変化が一つのリズムを作り、その流れを少しずつ知っていくと、「もっと自分を大切にしたい」という気持ちが自然と育っていきます。

 忙しい日々の中で見落としがちな小さな変化に気づき、時に笑いも生まれる。楽しく気軽に、でもちゃんと自分に寄り添えるようになったことも、この研究に参加した大きな収穫なのかもしれません。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 44からの転載】

平井理央(ひらい・りお)/ 1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。