長年にわたり沖縄県民に親しまれてきた瓶入り牛乳が、75年の歴史に幕を閉じる。宮平乳業(沖縄県糸満市)はこのほど、瓶入り牛乳とカフェ瓶(カフェオレ)商品の製造・販売を終了することを発表した。
宮平乳業は1919(大正8)年に宮平隆忠氏が北大東島で創業し、2019年に創業100周年を迎えた沖縄を代表する乳業メーカー。創業当初は「やかんで殺菌した牛乳を隣近所へ販売」という小さな始まりだったという。1950(昭和25)年に2代目の宮平隆政氏が事業を継承し、北大東島から糸満市へ移転。琉球政府による衛生公認第一号を取得し、瓶牛乳・宮平玄米の本格的な販売をスタート。当時は糸満の市場や各家庭を回る宅配形式で、多くの県民の朝食卓を彩ってきたという。
その後、3代目の宮平隆雄氏の時代には、量販店への販路拡大を図るため紙パック商品の製造・販売を開始。1989(平成元)年に「株式会社 宮平乳業」を設立し、紙パック牛乳・紙パック玄米・瓶牛乳・瓶玄米を、量販店・宅配を中心に製造販売してきた。
瓶入り商品には、本来の風味を長く保つことができる、回収・洗浄・再利用ができるといった利点もあったが、近年の包装容器市場では、環境配慮や利便性の観点から紙パックやペットボトルへの移行が進み、ガラス瓶を使用した商品は全国的に減少傾向にある。そのような市場環境の変化や生産効率化の必要性から、このほどの決断に至ったという。
瓶入り商品の終売という一つの区切りを迎える宮平乳業。一方で、2019年の創業100周年を機に「宮平ジェラート」を発売し、2020年には余剰乳を活用したスキンケアブランド「Chi-Chi」の展開を開始。2024年には自社製造の「宮平牛乳ジェラート」へとリニューアルするなど、乳製品の可能性を広げる挑戦を続けている。同社は、今後も沖縄の乳業を支える企業として新たな取り組みを積極的に展開していくとしている。
なお、瓶入り商品の販売終了日や、これまで使われた空き瓶の回収方法などについては、同社ウェブサイトやインスタグラムで順次発信するという。










