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「早期発見・早期治療」で子どもたちの命を守る 東京青年会議所、フィリピンで啓発運動と医療支援を実施

 今年も厳しい暑さに見舞われた8月。公益社団法人東京青年会議所(東京都千代田区、外川隆司理事長)のメンバー25人の姿は、日本を離れフィリピン・マニラにあった。この時期マニラは雨季のため時折スコールに見舞われるせいか、気温は日本よりも低く感じたという。

 そんな彼らが、熱意を持って向かった先はマニラ北部のスラム街エリア「スモーキーマウンテン」だ。かつては巨大なゴミ山が存在し、ゴミから発生するメタンガスなどで自然発火が絶えず常に煙が立ち上っていたためこの名がついたという。ゴミ山の撤去は進んだものの、新たなごみ捨て場ができているため、今なお生活を続ける人がいる。    

     東京青年会議所は、20歳から40歳までの経営者や会社員、公務員など多様なメンバーで構成される公益社団法人だ。東京23区各区での地域活性化イベントや「わんぱく相撲全国大会」の運営、選挙時の公開討論会・政策提言コンテストなど、さまざまな企画に取り組んでいる。そんな中、東京青年会議所がJCI Manila(JCIマニラ)との国際協働事業として実施しているのが「〜Unity for Action〜フィリピン小児がん早期発見プロジェクト」だ。

 本プロジェクトに賛同する企業や団体、個人から寄せられた寄付金総額130万円(8月8日時点)を活用し、フィリピン小児医療センター(Philippine Children’s Medical Center、PCMC)へ寄付金贈呈をはじめ、生活困窮地域であるスモーキーマウンテン周辺の住民を対象に、啓発チラシやステッカー、レモネードの無料配布などを行った。

▼フィリピンにおける小児がんの現状と貧困の壁

 フィリピン社会の深刻な問題の一つとしてとらえられているのが、小児がんを患った子どもの生存率が低いことである。フィリピンのような発展途上国における小児がん患者の5年生存率は約20%とかなり低い。その背景には、病気に気づかず受診すらできない子どもたちが多く存在する実態がある。進行の早い小児がんだからこそ、早期に発見し、適切な治療へつなげる「早期発見・早期治療」が最も重要だ。

「Unity for Action ~持続可能な途上国支援プラットフォーム~」より引用 

▼レモネードスタンド啓発運動で命を守る知識を届ける

 この深刻な課題に対し、東京青年会議所はJCIマニラとともに小児がん早期発見プロジェクトに着手。その一環として「レモネードスタンド啓発運動」と題し、レモネードをモチーフにしたステッカーやジュース、啓発チラシを作成。チラシには小児がん初期症状のチェックリストや受診を促す内容がタガログ語で記されている。これらを手に、スモーキーマウンテン現地へと向かった。

配布したレモネードジュース、ステッカー、チラシ

 いざ、住民たちへ配布を行う。大量の物資を抱えたメンバーの周りにはすぐに興味を示した住民が集まった。特に子どもたちは目を輝かせながらジュースやステッカーをうれしそうに受け取る。メンバーは笑顔で応じながら、啓発チラシも忘れずに手渡しする。もらったステッカーを自分の胸元に張り付ける子どもたちの姿がとても印象的だった。「Care for life!(命を大切にしよう)」と一人ひとりに声をかけながら、現地住民との交流を通じて啓発運動を行った。

実際に配布している様子

 本プロジェクトを担当した東京青年会議所国際政策室の出川貴史室長は「最大のミッションは、小児がんという病気を知ってもらうこと。配布したステッカーやモチーフにしたレモンを目にしたときに、小児がんのことを思い出すきっかけになればうれしい。それが少しでも、病院への受診や診療へと足を運ぶきっかけにつながれば」と期待を寄せた。

東京青年会議所国際政策室の出川室長   

▼スモーキーマウンテンに学びの場 就学率7割へ

 東京青年会議所とJCIマニラは2000年に姉妹提携を締結して以来、密な交流を続けてきた。2025年にはスモーキーマウンテンに教育施設「ラーニングセンター」を建設。学校に通えない子どもたちが学べるスペースを作った。設立当時は真新しかったセンターだが、1年がたち、多くの子どもたちに使われてきた跡が残る。ラーニングセンターの管理人によると、同センターを利用する子どもたちを対象に調査をしたところ、約7割が学校へ通えるようになったという。管理人は「今まで勉強する場所がなかった子どもたちにとって、Wi-Fi環境があり、冷房も完備された、勉強に集中できる恵まれた環境である。ラーニングセンターができたことで、子どもたちの人生が大きく変わり始めた」と喜びを語った。

 

ラーニングセンター。1年がたち、頻繁に利用されている様子がうかがえる

▼フィリピン小児医療センターへ寄付金と物資の贈呈

 今回の活動でもう一つの大きな軸となったのが、フィリピン小児医療センター(PCMC)への支援活動である。「Care For Life. Fighting Cancer」と題した寄付金・物資の贈呈式が行われた。東京青年会議所から寄付金に加え、食料や衛生キット、ぬいぐるみなどのおもちゃが寄贈された。

贈呈式の様子

     贈呈式には医師や関係者、また同センターに通う子どもたちが参加。その中には小児がんを患い、治療を受け克服した子どもたちも多く見受けられた。日本文化を通じた交流として、折り紙で鶴を折るプログラムも実施。東京青年会議所のメンバーが折り紙を教えながら子どもたちと一緒に鶴を折り、完成した色とりどりの折り鶴は桜をモチーフにした木のオブジェへと飾られた。

折り紙で鶴を折る現地の子どもたち。初めての折り紙に少し苦戦している様子

 JCIマニラのエディソン・ケイ理事長は「東京青年会議所はわが国の問題を自国のことのように捉えてくれている。フィリピンは日本に比べて医療体制に課題がある。だからこそ、今回の協力は非常に大きな力になる。こうした相互の協力関係こそが今後のパートナーシップの鍵になると確信している」と感謝を述べた。

 PCMCは17歳以下の小児専門病院で、月間の外来患者数は約1100件、入院患者数は200人に及ぶ。がんと診断された子どもたちの中でも抗がん剤などの化学療法が必要な患者のみが入院対象となり、入院期間は約1週間程度、合併症などが伴う場合は2週間程度と比較的短い。退院後は6カ月~1年ほどかけて通院治療を行う。限られた病床数の中で、多くの患者を受け入れるよう効率的に運営している。

 がん患者が入院する「Cancer & Hematology Centers(がん・血液学センター)」では、8月15日時点で26人の子どもが化学療法を受けるため入院していた。病室は5~6人程度に区切られている。今後は新たな収容棟の完成も予定しているようだ。

治療を受ける現地の少女。日本語を少し勉強しているようで「こんにちは」と笑顔で話しかけてくれた

▼一時的な支援で終わらせない、世界の社会課題解決に向けて

 東京青年会議所の外川隆司理事長は「今回のプロジェクトはレモネードスタンド啓発運動とPCMCへの医療支援という『2つの軸』で展開した。病気をまだ知らない人に伝える啓発と、一人でも多くの命を救うための寄付金支援というアプローチができた。しかし、これは非常に大きな社会問題であり、一時的な支援だけで解決するものではない。持続可能な支援体制を構築していきたい」と今後の課題を話した。

 その第一歩として、今年11月にフィリピンで開催される世界各国の青年会議所が集う「JCI世界会議」にて、「〜Unity for Action〜フィリピン小児がん早期発見プロジェクト」を紹介することが決まった。国境を越えた社会課題解決のモデルケースとして世界に知ってもらう絶好の機会となる。東京青年会議所は今後もさらなる国際協働を目指す。