日本発の人気キャラクター「ちいかわ」がアジアで爆発的な人気を博し、社会現象になっている。中国上海市では9月12日から大型展示イベント「CHIIKAWA DAYS」が始まった。11月1日までの51日間開催され、オープン初日から詰めかけるファンの映像や写真がSNSでアップされた。
会場は、高級ブランドや百貨店が並ぶ上海中心部の目抜き通り。交差点の近くには主要キャラである、ちいかわ、ハチワレ、うさぎの3体が高さ9メートルの巨大人形となって現れ、道行く人々がスマホをかざして撮影している。現地では複数のぬいぐるみをキャリーカートで運んだり、自宅に飾られた大量のコレクションを動画で公開したりする熱狂的な男性ファンもいて、日本のファンも顔負けである。
私が昨年、上海を訪れた時、ちいかわグッズの販売店には長蛇の列ができていた。今年春には、フィリピンから来日した友人一家の子どもが、ちいかわのTシャツを着ており、都内のちいかわショップに行くのを楽しみにしていた。
今やアジアの至る所で、ちいかわを見かけるのだ。

ちいかわが本格的に登場したのは2020年1月で、作者のナガノ氏がX(旧ツイッター)で漫画の連載をスタートさせたのが始まりだ。翌年には単行本化され、22年からはフジの「めざましテレビ」で放送が始まった。その数年後には中国、台湾、韓国など東アジアを中心にちいかわブームが巻き起こった。25年3月に配信されたスマホゲーム「ちいかわぽけっと」にいたっては、世界43カ国・地域で展開されている。
その勢いを象徴しているのが、今年夏に日本で公開された「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」だろう。上映開始から52日間で観客動員数が1000万人を突破し、興行収入はすでに158億円(9月20日時点)に上る大ヒット作である。
その理由は、キャラの可愛さだけでなく、ストーリー展開やテーマ設定にもあり、さまざまな視点から考察する大学教授や識者も多く、老若男女問わず幅広い層で支持を集めている。
映画も台湾や香港、東南アジアなどで徐々に上映が開始されたが、上海を含む中国本土ではまだ上映されていない。高市早苗首相の台湾有事をめぐる昨年11月の国会答弁以降、日中関係が悪化した影響で、日本の映画上映が難しいからだ。このため本土から香港へ足を運んで観るファンが続出し、SNSで感想を投稿している。
この人気ぶりに便乗したトラブルも発生している。くら寿司は9月5日、従業員による不正行為が発覚したため、ちいかわとのコラボキャンペーンを中止すると発表した。景品を従業員が横領し、高額転売を狙ってネットに大量出品したためとみられる。同じような騒動はセブンーイレブンでも7月に起きた。
アジアを席巻するちいかわブーム。まだしばらく続きそうだ。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.37からの転載】

水谷竹秀(みずたに・たけひで) ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、「日本を捨てた男たち」で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。







