そして、この映画が描いたサイレントからトーキーへと移行する際の混乱ぶりを見ながら、同じ題材を描いた名作ミュージカル『雨に唄えば』(52)のパロディーみたいだと思っていたら、この曲が先に歌われた『ハリウッド・レヴィユー』(29)と思われる映画の製作風景が映り、その後、本物の『雨に唄えば』が意外な形で登場する。しかもすこぶる感動的にだ。
それによって、3時間余り描かれてきた、一種グロテスクな狂乱や狂気の話が、帳消しになって、何だか映画愛に満ちたいい話を見たような気分になる。これはちょっとずるい感じもするが、この映画と『雨に唄えば』を並立させることで、ハリウッドが抱える矛盾や光と影を象徴的に見せたかったのかもしれないという気もした。
とはいえ、3時間余が、思いの外、長く感じられなかったのも事実。やはりチャゼル監督の力量はたいしたものがあるといえるのではないだろうか。
(田中雄二)