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1920年代、ゴージャスでクレイジーな映画業界の裏側を描いた『バビロン』【映画コラム】

『バビロン』(2月10日公開)

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 『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督が、オリジナル脚本を書き、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く189分の大作。音楽は『ラ・ラ・ランド』のジャスティン・ハーウィッツが担当。

 チャゼル監督は、『セッション』(14)ではジャズ、『ラ・ラ・ランド』ではロサンゼルスへの偏愛ぶりを示したが、それはこの映画からもうかがえる。そういう意味でも、これは明らかな“チャゼル印の映画”だといえる。

 夢を抱いてハリウッドへやって来たメキシコ人の青年マニー・トレス(ディエゴ・カルバ)と、スターを目指す新進女優のネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)。彼らの人生は、サイレント映画の大スター・ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)との出会いによって大きく動き出す。

 恐れ知らずで美しいネリーは、自由奔放な個性で観客を魅了し、スターへの階段を駆け上がっていく。一方、マニーはジャックに世話係として雇われた後、大手映画会社のプロデューサーとなる。だが、『ジャズ・シンガー』(27)を皮切りに、トーキーが映画に革命を起こし、彼らの運命が狂い始める。

 ジャックのモデルはジョン・ギルバート、同じくネリーはクララ・ボウか。パーティーのシーンではロスコー・アーバックルのような男も出てくる。いずれもサイレント映画時代の実在のスターたちだ。

 主役の3人に、トランペットの名手シドニー・パルマー(ジョバン・アデポ)、中国系女優のレディ・フェイ・ズー(リー・ジュン・リー)、ゴシップコラムニストのエリノア・セント・ジョン(ジーン・スマート)らが絡む。

 そのほか、トビー・マグワイア、サマラ・ウィービング、オリビア・ワイルド、エリック・ロバーツ、ルーカス・ハース、キャサリン・ウォーターストン、「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーらも顔を見せる。

 オープニングで描かれる狂乱のパーティーや、パワフルで狂気に満ちた映画製作が、やがて映画業界に求められた社会性やヘイズ・コード(自主規制条項)の導入によって、様変わりしていく様子は、例えば、西部開拓時代の無法、無秩序がもたらしたエネルギーが、やがて文明や法の波によって終息していくさまとも重なる。