未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、兄弟のいる子育ての悩みについてアドバイスします。
3人兄弟 長女にばかり、我慢をさせているような気がします。
【質問】
わが子は、長女(小学2年生)、長男(3歳)、次男(0歳)の3人です。長女は、ききわけがよいこともあって、他の兄弟に合わせてもらうことが多いです。休日に遊びに行く時も、0~3歳でも行けるような幼児向けのあそび場が多くなっています。その上、日常でも「お姉ちゃんなんだから」とつい厳しいことを言ってしまいます。不満そうな様子は分かっていますし、かわいそうには思うのですが、親にも長女に配慮する余裕がない状態です。
【竹下和男先生の回答】
▼子育てを楽しめば気持ちにも余裕がでてくる 愛情を3等分しなくていいから、その都度たっぷり与えてあげて
長女の「不満そうな様子」が分かっておられるのなら、まずは安心ですね。それが分かっていなければ、「不満に気づいてあげてください」でお話を始めるところです。
これは一人っ子の親には生まれない悩みです。でも3人いるからこそ生まれるいさかいや心配事のすべてが、それぞれの自分らしさを加味したコミュニケーション能力を身につけていることに気づくとほめてやりたくなってきます。
自己という存在を自分で理解できるようになるのは3~5歳です。だから3人がケンカをしても、解決方法を説明できる相手は長女しかいません。そこで「お姉ちゃんなんだから」になってしまうのです。
長女は3年間、「お姉ちゃんなんだから」と言われ続けて育ってきました。次男が生まれたときにはもう7歳になっています。長女はつくづく、自分の親の子育てが2人の弟中心になっていると不満を感じていることでしょう。下の子が生まれたことで、「あかちゃんがえり」といって、上の子が卒業していたはずのおねしょをしたり、乳幼児的な甘え方をしてきたりすることもあるかもしれません。そんなときは叱らず、思いっきり甘えさせてください。そして、「いつも弟をかわいがってくれてありがとう」と言いましょう。
子どもがお互いに刺激を受けて育っていく様子を観察すれば、毎日楽しめます。そんな余裕はないですか。いえいえ、楽しむと気持ちに余裕がでてくるのです。
親は3人の子どもに、自分が与えられる愛情を3等分しようとしなくていいです。子どもの方は、「3分の1ずつの愛情」を理解できません。親の愛情って不思議なもので、与えても与えても湧いてくるから、その都度、たっぷり愛せばいいのです。子どもたちは親からの愛情を受け取ることによってしか、愛情の感受能力を育てられません。
話しかけるといつもちゃんと聞いてくれる。ハグや抱っこや肩車をしてくれる。絵本を読んでくれる。一緒に風呂に入ってくれる。
子どもは、物を買い与えてくれるより、楽しく心地いい時間を一緒に過ごす方が好きです。それぞれの長所を子どもたちに繰り返し語ることも、親に心の余裕を持たせることに役立ちます。そうしているうちに子どもたちはそれぞれに成長し、長女の状況もずいぶんよくなっていきますよ。
夫婦や祖父母の協力があれば有効です。さらに保育園やこども園、放課後教室など地域内の大人や子どもたちとの連携も考えられます。ゆったりと子育てを考えましょう。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップ、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。