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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】骨折は痛い

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】骨折は痛い

2024年12月26日=2,089
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


▽初めての痛み

 骨折は痛い、骨が折れるとムチャクチャ痛む。骨折経験者はお分かりでしょう。がん発病のかなり前だが足の指を骨折したことがある。いつだったかは記憶にないけれど非常に痛かったことだけは鮮明に覚えている。

 2024年の11月上旬、腰痛が突然にやってきた。だが、しばらく経過を見た。自分が医者だからと言うよりも持病に腰椎ヘルニアがあり、腰の痛みは割とよく出る症状やから。

 でも痛みの程度が今までと全く違う。かなり激しい。布団から起き上がるにも四苦八苦、トイレに行くのもままならない。こんな大変さは初めてや。痛み止めなど自己判断で2週間ほど経過を見てからようやく整形外科で診察を受けた。

▽一安心

 その診断は、腰骨の圧迫骨折。第1腰椎が裂けてずれていた。痛いはずや。わが悪性腫瘍ジスト(消化管間質腫瘍)はすでに転移している肝臓だけでなく骨にも転移する。だから骨への転移が原因か、と不安になった。

 さらに検査を進めてもらうと、現時点ではがん転移よりも加齢などによりもろくなった骨に何らかの原因が加わり骨折したとの診断を受けた。一安心。

 ただし検査で100パーセントは分からぬことくらい、嫌というほど知っている。いち患者としても、いち医療者としても。でも分からぬことを憂いても切りがない。切りなきことは放っておくに限る。

▽不便だ

 とは言っても日々の生活はかなり不便だ。まず物を手で持てなくなった。医者からは「重い物は持たないで!」とくぎを刺されている。ここで私は思う。「重い物って、例えば?」「何グラムまでは持ってええの?」などと。

 医者(だけ)の時には私もやっていた、この具体的でない曖昧な説明を。大反省だ。だからこうすることにした。とにかく物を手で持たない。不要不急の物は手にしない。

 次にコルセット。腰から背中にかけて密着させる非常に硬い代物である。ヘルニアの時に使っていた柔らかな物とは全く素材が違う。「よろい」と呼ぶことにした。もちろんこの「よろい」で痛み少なく起き上がることもでき、よちよち歩くこともできるようになった。ありがたい。「寝る時だけは外してええですよ」とも医者から言われたが、実生活では寝てなくても外したい時がある。例えば食事の時。おなかが張り、さらに胸まで圧迫されて食べられへん。がん治療で胃手術後は発病前のようには食べられなくなっている体に追い打ちをかけてくる。

▽抗がん剤が使えない

 最大は、命をつないでくれてきたがん治療の、悲しいかな、中断。骨折が癒える過程で抗がん剤は好ましくないため一時やめることになった。ちょうど抗がん剤を再開するタイミングで骨折に見舞われたため、2カ月あまり中止してしまっている。

 この間にジストがもう進行してるんじゃないか。それこそ骨に転移、いや他へも転移してしまう。これまた不安が募るばかりである。う~ん、もうやってられへん・・・・・でも死にたい訳やない。生きたい、しぶとく。そこで皆さんと一期二会かなえるため、久しぶりにペンを執りました。

そしてわがユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。

 応援してもらえると生きる力になります。引き続きごひいきのほど何とぞよろしくお願い申し上げまぁす。

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。